にゃんこのしっぽっぽ-猫的徒然話
ここは“にゃんこのしっぽっぽ-猫的徒然話”です。 ここでは猫好きな管理人の趣味大爆走で御送りする、 ねこねこしたブログになっていくでしょう。 ちなみに、やはり愛猫ももちゃんが出現する率は高いです。
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HN:
ささら 由羅
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趣味:
創作とか♪多趣味。
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どうも、ささら由羅と申します。COOLな猫好きな人間です。(まわりの人間いわく猫狂い、猫キチガイ)。
愛猫は、ももと申します。可愛らしく、そしてナカナカ気のつよ~い女の子でございます。どうぞ、よろしくお願いします。
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2025/04/02 (Wed)
2018.07.20
ももとの最後の思い出ー回想記10
続きます。
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11
月30日 ももを待つ時間
「本当に申し訳ありませんねえ…」
そこの寺の坊さんのお母様の、ほどよく元気のいいばあ様が来て、壊れた急須を片づけて、
新しい急須で御茶を入れてくれた。
私は、そこで御茶を飲んで落ち着いた。
御茶は美味しかったのか、どうなのか味は覚えていないけれど、落ち着いたのは確かだ。
「大丈夫でしたか?」
「はい、御心配かけまして…」
母親とばあ様とそんなことを話していたが、会話なんて覚えてない…。
(ももは、今、燃えていて熱いんだろうな…)
私はそんなことを考えつつ御茶を飲んでいた。
で、母親と父親とばあさまは、部屋から出ていった。
どうも、知り合いの墓がこの寺にあるのらしいが、場所がわからないということで、案内してもらうらしい。私はここで待つことにした。とても他人の墓に手を合わせる気分にはなれない。
私はお菓子を食べつつ、お茶を飲んだ…。
「味しないな…」
本来なら甘いはずのお菓子も何も味は感じなかった。まあ、ももが死んでからずっとそうだった。もう、ショックで味覚がマヒしているみたいだった。
お菓子はレモン味の洒落たお饅頭みたいなものだったが、なんか、しっとりとした練った小麦粉を食べているみたいだった。いや、小麦の感触はあるのだが、本当に味がしないので、何を食べているのか分からなくなった…。
(ももだったら、何を食べてたのだろうか…?)
そんなことを漠然と考えてた。ももは、女の子のせいなのか、甘いお菓子が結構好きで、私がおやつとかを食べていると、やってきて、よく一緒に食べたのだ。
晩年は腎臓が悪いので量は控えめになったけど、ふたりで仲良く食べてたなと思いだす。
もう、ふたりでお菓子食べることもなくなっちゃうのか…。
つい最近も、食べたな…。お饅頭食べたっけ? マシュマロも食べたな…。
甘いお菓子が好きな子だった。
体調の事を考え、あげる量は少なめだけれど、私がお菓子をお皿にとりわけ、食べやすい形にしていくのを嬉しそうに楽しそうに見ている子だった。
そして、ぺろっと食べて美味しいねえという顔をするももが可愛かった。
(もっと、ちょうだいよ?)
可愛くオネダリされて、私は負けて、またちょっとお菓子を追加してあげることもあったな…。
かなりあったな…。
本当に可愛い顔をしておねだりするので、どうしても、負けてばっかだった。
といっても、限界はあるので、ある程度いくともう駄目だよといってあげなかったけど、その時はももは、うーんそうなのか…という顔をしてた。
「また明日たべようね」
そういうと上目遣いのような、まだ食べたいという顔のような、でも、無理なんだろうなような何ともいえない顔をしてた。
なんとも罪悪感の残りまくる顔をしてくれるももであった…。
いろんな意味で賢い子であった…。
そして、そのあとは、ももは私の足の上にのってリラックスしたり、音楽聞いたり、本の上に乗ったり…、いろいろしてたな…。
なんでもない他愛ないことだけど、愛しく切ない思い出になってしまった…。
「もっといろんなことしたかったな…」
こう亡くなってしまうと、してあげたかったことが山のようにわいてくる…。
私はももの最期には、ももと叫んで、抱きしめることぐらいしかできなかった…。
ももが最後に見たのは、半狂乱になりかけて泣いている私なのだ…。
(なかないの…)
そんなことをいってくれたような目だった気もする…。
あんなに苦しんでいたのに、亡くなる時には悲しいほど優しい顔になって、そして死んでいった…。舌もでろっとでて、死んだとわかる顔になっても、そっと目を閉じさせ、舌も口に入れてそっと撫でたら、穏やかな穏やか過ぎるほどの顔になった。
最後の最後まで美猫なももだった…。
私だけが彼女の死を看取ったのだ……。
ももを抱いて、泣くしかなかった私も思いだす……。
私が60歳になるまで生きるって約束してくれたじゃないか…。まだまだ私は60歳にはなってないぞ。ずっと未来の話なのに…。
何で、お前は先に行くのだよ? 何で、私を置いて天国にいってしまうのだよ?
情けなく、強くはない私を置いていって、お前は平気なのかよ?
腎不全で倒れた時は、あまりにも情けない私の為に死にそうだったけど、復活していきてくれたじゃないか…。どうして、今回行はいってしまったんだよ…?
あの時みたいに死んじゃいそうなそぶりなんか見せずに、一気に天国へ行ってしまった。
あの時以上に、ぼろぼろ泣いても君はもう戻ってこない…。
(そばにいてあげるね)
とそばに寄り添う事もない…。
あんまりじゃないか……。もも……。
死ぬような予感なんかさせないで、ただただ我儘で甘えん坊で、可愛い猫をやっていたのに、
いきなりあの世にいくなんて、あんまりだよ…。
もものことが溢れるばかりに思いだす。すべてが愛しく、すべてが切ない…。
溢れるばかりの思い出は形にして残しておこうね。
もも、君のことを忘れないけど、
忘れたくないから、形にするよ…。供養の品になるといいのだけれどね…。
思い出に浸りながら、そんなことを心に誓う…。
(もも…、お前はもう、ここにはいないのね…)
今、ももの魂は何処にいる? 私の傍にいるのか?
ふと、そんな気になる…。どうにも、ずっと私の傍に何かがいる気がするのだ。
それは不快なものではなく、ただただ存在する。ももなのだろうか?
そうに思えてならなかった…。
姿は見えなくても、私に寄り添ってくれようとしているのか?
(もも、お前は魂になっても優しいな…)
泣きそうになる…。勝手に想像して泣きたくなる。
亡くなったものの魂はしばらく彷徨ってから、近しい者を巡ってから、あの世に行くという。
どうぞ、やすらかにいってくれ…。そして、いつか私がそちらに行く時、お迎えに来てね。
いつあの世にいくかなんてわからないけど…。
遠い未来の事かもしれないし、案外近い未来の事なのかもしれない。
そして、同時にもうひとつのことを祈る。
化け猫でも、猫又になってもいい。生まれ変わってもいい。
私達のところに、いつか帰ってきてね。
ももがいない世界は、悲しすぎるよ。
ももだって、きっと大変だし、こちらも、もうこんな悲しみでぐしゃぐしゃだけれど…。
ももがいつ帰ってきてもいい様に準備だってなんだって、整えておくから、いつか帰ってきてよ。すぐに生き返るのは難しいだろうから、けれどもちゃんと待っているから…。
そうしたら、ほとぼりさめたら戻ってきてね…。
そんなことを、ぐしゃぐしゃな頭の中で思って祈る…。
「もも…、お前がいないのは寂しいよお…」
この慟哭、この虚無感、この悲しみ…
ももの存在が、強烈にそれを連れてくる…。
それらは忘れてくれるなといっているのだろうか?
忘れるわけないだろう…?
いつか、戻ってきたら、お帰りといって抱きしめてやるよ。
いっぱいなでなでも、いっぱいブラッシングも、いっぱいのだきだきも…
私の手は忘れないよ。
ももの好きな、ご飯もおやつもたんまりあげるよ。
まだまだ、やり残したことあるんだよ。ももだってあるでしょう?
また、いっしょにやろうよ?
私は人間、ももは猫…。そのつながりの深さに泣けてくる。
また、おいでよ。もも、君だけだよ…。私のそばにずっと居てほしい猫は…。
だから、あんまりだ。このまま死んで、さよならなんて…。
いつか、逢おう…
私は目を閉じる。御骨になってしまうももがいる現実の空間なんぞ見たくはなかった。
自分で作る虚ろな闇の中、そこに閉じこもって消滅してしまいたくもなる。
けれども、それはできない…。
ももを待つのだから…。私は生きていかなきゃいけない…。
わかりすぎている結論。それは酷く残酷で虚ろだった…。
そして…、そして…、そして…。
「どうも申し訳ありませんでした…」
意識が虚ろになる一歩手前だったと思う。坊さんがタオルに包んだ氷で手を冷やしながら、やって来た。
「ええと、大丈夫ですか…?」
そんなことしか言うことがない。
「いや、本当にすいません…」
申し訳なさそうに、坊さんは言った。
「いや、なんていいますか、びっくりしましたが、誰のせいでもないのだし、とにもかくにも火傷ですんで、幸いでした。お大事にとしかいいようがありませんけど…」
私は本当にすまないことに、何もいいこともいえやしなかった。
なにをいえというのだ?
が何故か、話していた……。気が付いたら、以前、ここの寺にいた犬の話になった。
「悲しいのはわかりますよ」
穏やかに坊さんは話をした。
「私も、犬を飼ってましたから…。死んだときは本当に悲しくてね、泣きもしましたよ…」
坊さんだって、そりゃ大事にしていた飼い犬が亡くなりゃ、そりゃあ、悲しいだろう。
けれども、どこかぶっ壊れた私は、ああ、坊さんでも悲しいものなんだなと、何とも失礼な思想になってしまっていた。
で、ふと気づく。
「ん? それって、この御寺の一角の檻というか、犬の庭みたいなところによくいた、真っ黒い犬???」
「そうです。あれ、知っていたんですね?」
意外そうにお坊さんは私を見た。
「ももが来る前の事だから、もう20年ぐらい前のことだけど、覚えている…。堂々としてて、大きくて、ちょっと怖かったけど、おそらく優しい性格のわんちゃんでしたね…」
「覚えてくれてたんですか…」
「なんていうか、お墓参りをする人達をいつも見守ってましたね…。たまに吠えられてびっくりしたこともあったけど、ちょっとそれは怖かったけど、優しい目をしたわんちゃんでしたね…」
おぼろげな記憶をたぐりよせる。
手を振ると、こっちをみて尻尾を振ってくれる犬だった。そんな接したことがあるわけではないけれど、この寺に来る人々をそっと見守る、そんな犬だった。
あのわんちゃんもあの世にいっちゃってたのか…。
もう随分時はたっている。わかってはいる。それでもそれは悲しい事だ。
「うーん、愛想はそんななかったかなあ…」
坊さんはちょっと嬉しそうな顔をしていった。
「犬も、猫もみんな消えちゃうんだな……」
またそう思えて、悲しくなる…。思わずいってしまう
「でもって、私も消えていく…まだ、消えるつもりはないけど、わかっているけれど惨いし、儚いなあ……」
自分の命がやがて消えるという結論にしろ、最愛の猫のももがあの世に消えたことにしろ、過去に接した自分が知っている動物達があの世に行ってしまったこと…、何にしろ悲しかった。
「人間よりも動物は先に死ぬという結論はわかっていても、割り切れるものではないですね…」
「そりゃそうでしょう…」
坊さんは静に答えた。
きっと、坊さんは、ペットを見送る飼い主達をとんでもなく見てきたわけだから、何かしらわかっているんだろうなあ…。なんかそんなことを考えながら、しばらく話をしていた…。
やがて、坊さんは出ていき、更に父と母が戻ってきた。
「おい、あともう少しで、ももの御骨ができるって…」
父親がいう。物凄く静かな声だった。
「な~にぼ~っとしているのよ!」
母は何がそんなに面白いのか、私を見て笑っていた。やたらに元気な母である。
「そうか…」
母の姿を見るのがなんだか、どうにも嫌で、そのまま部屋から私は外に出る…。
「いよいよ、御骨になっちゃうんだね…」
もう、ももの姿は御骨になる…。 白く、儚いカルシウムになってしまう…
その現実が悲しかった。
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ももとの最後の思い出ー回想記11 に続きます。
[1回]
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2018/07/20 (Fri)
出来事
Comment(0)
2018.05.23
ももとの最後の思い出ー回想記9
続きます。
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11
月30日 ももは何かを訴えた…?
もう、何とも言えなく、ただただ悲しく虚無だった…。
最期のももの姿を見て途方に暮れる…。
(おやすみ、またな…)
そういっているようにしか見えない可愛いももの姿が、火葬炉の扉の向こうに消えていく。
いつものように、おやすみといっているももにしか見えない…。
それでも、ももは死んでいる。これから真白な骨にと変わっていくのだ…。
酷く惨い世界だった。すべてがどこか遠くなる…。
(ももちゃん、ももちゃん、ももちゃん…)
頭のなかは、亡くなる30分前ぐらいのももちゃん、亡くなる途中の苦しんでいたももちゃん、
死にゆき安らかな顔になってしまったももちゃん…。
いろんなももちゃんが、溢れるほど出てくる…。こんなにいっぱいももちゃんが、思いだされるのに、私の傍にももがいない。ももがいない…。ももがいない…。
ももがいない現実で、狂いそうになる。いやもうすでに狂っていたのだろうとは思うけど。
ももが御骨になるまでの間、寺の待合室みたいなところで、手続きをしながら待つことになった。流しの付いた部屋で、テーブルとベンチのような木製の椅子の置かれたシンプルな部屋だ。さり気なくテーブルの上にはお菓子の入った籠と、蜜柑のもってあるかごが置いてあった。
椅子に座っているものの、何だか私はぼーっとしていた。手続きの書類を書くと言っても私は特に何をするわけでもないのだ。
なのに、何故か私が席の真ん中に座らされているという、よくわからない事態だ。
何故、こうなるのだ…。わけがわからない…。
それはさておき、父親は書面を見ていたが、ぐすぐすとなんかをいい、母親に、
「悪いが、お前が書いてくれ…。
といって、母親に書類を渡した。歳をとって目が見づらいといっていたが、本当はそうではない様な気がした。まあ、別に母が書いても、私が書いても変わりはないのだから、別に問題はないのだけど。 母親は、別になんでもないように、書類を父の代わりに書き始めた。
私は一体父親と母親との間に存在して、何をやっているのだか…。
そんなことを漠然と思う。
私のいる意味とは何だろう…?私が存在している意味は何なのだ…?
そんな父親と母親の行動を見ながら、ついでに、お茶を入れてくれている坊さんの動きを見ていた。このまま、なんともいえない時間が過ぎる…とこんなことを思った…。
「うおわあああっ!!?」
が、坊さんが叫んだ。突然、坊さんが絶叫をあげた!
何がおきたのかわからないが、お茶を入れていたはずの坊さんが、のたうちまわるような奇怪な動きをした。坊さんの顔が何やら歪んで、何かを呻く…???
「??????」
まず通常では起きることのない現象である。寺の中で、突然坊さんが絶叫して苦しむ姿なんぞ、
見れるものではない。というか、好んでみたいと思う人もまずいない。
何が起きたのだ?
私の意識は遠いところにいきかけ、ももの幻、思い出を見ていた気がするが、その坊さんの叫び声で、我に返り、茫然とする。
「ええと…、大丈夫ですか? 何が起きたんですか?」
とりあえず、そんな言葉が私の口からは出た。
「すみません、すみません…」
坊さんは、なんともいえない苦しそうな顔をして謝っているが、尋常じゃない様子である。
苦痛に歪んだ顔は凄まじいことこの上ない。
ももを失った悲しみで少々おかしいのではないかと自分の事を思っていたが、そんな場合ではないと、なぜか冷静に、よくわからないけれど判断をしようとしていた。
父親も、母親も何が起きたのかわからず、ただただ驚いていた。
で、母親はなんだかおたおたして、なんかを言っていた(わめいてた)。
父親は呆然としながら、
「何が起きたんですか?」
と落ち着いているのか、状況を把握してないのかそんなことをいっていた。
もっとも、この時点で、冷静に状況を把握している人間はいなかったと思う。
「ええと、この場合は救急車を呼んだ方がいいのかな? 緊急事態ということになるわけだし…。多分、私がどうこうできるような気はしませんし…」
私は、何故か落ち着いて(ぶち壊れて?)なんかそんなことをいった気がする。
で、私はカバンの中から、スマホを出そうとした。
できることといったら、そんなものである。他に何をしたらいいのだ?
(あれ?スマホじゃなくて、お寺の電話からかけたほうがいいのかな???)
なんだか、わけのわからない考えについでにいく。
「だっ、大丈夫です。すみません、すみません…」
坊さんは、相変わらずのたうち回りそうなくらいふらふらとして苦しそうに呻いている…。
どういう状態だ、これは…??????
ええと、どうしよう…。悲しみにぶち壊れているには壊れているが、妙に冷静になっている。
母親はまだ何かをわめいているが、やはり何を言っているのかまったくわからなかった。
まあ、ある意味いつもの母親である。
父親は、茫然としていたが、かすかな声で
「もも…?」
という。その様子にぎくりとなる。
なんていうか、漠然と意識していたものが、くっきりと意識になる。
(ももが、訴えているのか…???)
一瞬時が止まる。凍り付いたように止まる。
(もも、訴えているの…???)
思わず、火葬炉のある建物の方を見る。が、ここは別の建物だし、窓もあるけど火葬炉のある建物の方には窓は付いていないので、ただ壁を見たに過ぎなかった。
(ももだって、死にたくなかったんだ……)
やけにしっかりとそう思えた。ひどく確かにそう思えた。
(こんな火葬炉でなんか燃やされたくなんかないんだ…)
何とも言えないが、そんな考えがすっと浮かんでくる…。
なんか、わかったような気がした。何がわかったかといわれてもなんとも言えなないのだけれど。ももの気持ちだったのかもしれないと思う…。
ももは、家族を置いて天国へ行くのが、辛いのかもしれない…。
私達家族は、仲はそんなにいいってわけじゃないけれど(おい)、ももにとっては大事な家族なのだと思う。家族みんなに愛情を注いていたのだ。
私達はももを愛しているけど、ももだってこの家族を愛している。
そんなのもう、わかっている…。悲しいぐらいわかっている……。
ももは、たんまり私達を愛してくれた、愛しい愛しい猫なのだ……。
(きっとあの世に行くのは辛いのだろうな…)
そう思えて、また泣きそうになる。
そんな思いを抱きながら、ももは今火葬炉で燃え、御骨になっているのだ…。
きっと悲しくて苦しくて辛いだろうな…。
(熱いよっ、私は燃えたくないんだよ、御骨になんかなりたく無いんだよっ!)
なんか、ももがそういっているような気がして、たまらなくなる。
我ながらおかしい。そう思う。
(私は死にたくなかったんだよっ!燃やされたくなかったんだよっ!)
そうももが叫んでいる気がした。
「失礼しました…。うぐぅ…、突然、急須の、注ぎ口の付け根がパカッと割れてしまいまして…」
手を抑えているような坊さんの動きだった。
「へっ!?」
テーブルの上には、坊さんがいったとおり、急須があって、これまた見事にぱっくりと穴が開いていて、そこからはお茶の液体と葉がこぼれた後がある。よく見ればテーブルは結構濡れていた。
「あああ…。ええと…。その…」
「ととととととにかく、冷やさなきゃっ!!!」
父親と母親がなんかいう。
「だ、大丈夫ですから、その…うぐぐぅ…書類を書いてください…」
全然大丈夫そうじゃない坊さんが、へたりこむように椅子に座った。
書類書いている場合じゃねーだろとツッコミいれたいところだが、私は呆然とするしかない。
ともかく、書類はそもそもすぐ書き終わるものだから、まあ、すぐ書き終わった。
「ええと、ちょっと辛いので、申し訳ありませんが、手当てしてきます…」
もっともやっぱり無理はできないし、こちら側としても気が休まるものでは決してない…。
とりあえず、坊さんは奥の部屋に入っていった…。
「ももが怒ったんだ…。熱いぞって…」
父親が真顔でぽつりとつぶやいた…。
「そりゃあ、火葬だから熱いだろうけど…。火葬でいい火加減っていうのは難しいのではないか???」
我ながら妙な受け答えである。まあ、結局熱い温度でなければ御骨にはなれないのはわかる。
「焼かれたくなかったんだな。だから…」
父親は言う。
「かといっても、火葬にするって決めちゃったじゃないか…」
力なく私は抗議する。
「死んじゃったんだから、火葬にするしかないだろうが…」
父親は、何ともいえない顔で抗議する。
「それでも、ももは燃やされたくなかったのかもな」
私はそういうしかない…。私はももを燃やしたくなかった。火葬にしたくなかった…。
いまだって、そう思う。ああ、私はももの御骨をちゃんと見てあげられるのだろうか…???
「仕方ないじゃないか…」
父親は悲しそうな顔をしたが、私だって悲しい…。
「あんたら、何をいっているのよl!?」
母親がわけがわからないというように、ツッコミを入れた。
私だって、イミガワカラナイヨ…
「もし、仮にももだとしたら、なんで、坊さんがダメージを喰らうんだ?」
と私はふと思たことをつぶやいた。
「家族にダメージを与えるのは忍びないってことで、坊さんになっちゃったんじゃないのか?」
父親は平然と言った。
「おいおい」
「坊さんは、とばっちりかいっ!?」
私は、いろんな意味でくらくらしてきた…。
だ、だめだ…。茶でも飲もう…。
って、しまった。さっき、坊さんが急須が割れたって言ってたじゃないか…。あああ…。
「だって、急須のこんな所って、まず割れないぞ?」
父親は真剣にいう。確かにそうである。急須を割るってことはあるといえばある。
が、こんなふうに、注ぎ口の付け根が割れることは、カナリのレアケースである。
「やっぱり、ももが怒ったんだよ」
父親は確信をもっていっていた。
「かといっても、もう止めるのは無理だよ…。凄いことになると思う…」
レアやミディアムレアでOKというものではないのだ。ちゃんと御骨にならないで出てきてしまったら、どうしろというのだ。
御骨になるももは惨い姿だと思うが、それにならない姿ででてこられてもシャレにならない。
「う~ん、いい火加減でやってほしかったんだな…」
おいおい、父親よ。何か違うのではないか?
いろいろツッコミどころがありすぎて、なにがなんだか滅茶苦茶である。
何を私はいえばいいのだ???
「火葬にいい火加減てあるのか??? いやわからないけれど、まあ、熱いことこの上はないと思うよ。骨になるわけだし…」
「骨になっちゃうんだよなあ…。熱いよなあ…」
父親は、悲しそうにうつむいた…。
「そりゃあ、熱いよ…」
答えた私に、更に父親はいう。
「お前が、ももを燃やしたくないっていってたから、ももも燃えたくないって思ったんだろうな。燃やされちゃうよーって訴えたかったんだな…」
……。私のせいかい……。
でも、そんな気がしないでもなかった。
ももは私を泣かせたくはなかったのかもしれない。
だから、自分を燃やした坊さん?に、「なにすんのよーーーっ!!!」と一撃をくらわした。
そうも不思議と思えるのだ。
坊さんからすれば、たまったもんじゃないと思うけど。
「うちの子を泣かすんじゃありませんっ!!!」
ももは、ただただそれを伝えたかったのかもしれないな…。妙に納得してしまった…。
私が辛かったり悲しかったりすると、そっとよりそってくれる優しいももなのだ。
だから、なんか、妙に納得してしまった…。
「ええと、でも、もも…、御骨にはしないと大変だから、熱いだろうけどがんばれ…」
私もどこかどうしようもないことをかます。
ももは暑いのが苦手な猫である。それを考えたら、団扇か扇子をもってきてあげるべきだったのかな…。御骨になるっていうことは、物凄い暑いわけだし…。
が、私も考えていることがなんだかおかしい…。
「申し訳がないが、私らにできることは、ももちゃんを御骨にして、あの世に送ってあげることしかげきないぞ…」
他にどうしろというのだ?何もできない。
父親と母親は、あきれたように私を見ていた。多分、私が壊れたと思ったんだろう。
思いだすも、本当にこの時の私は尋常でないほど壊れてたんじゃないかと思う…。
そりゃあ、火葬炉のある方向の壁に向かって、こんなことをぶつぶついっていたら、やはり、危なっかしいと思うだろう…。
私は、本当に呆然としながら、なんだか通常ではまずありえない状況に、ただただ吃驚してた。
悲しいのは、私達家族だけでなく、ももも本当に悲しくてしょうがないのだな…。
なんてことを、ただただ考えていた…。
ありえない。単なる偶然なのかもしれない…。
けれども、坊さんの絶叫な出来事は、ももの悲しみにも思え、怒りにも思えだのだ…。
寺で、坊さんが絶叫をあげ、苦しむ姿なんぞ、まず見れるものではない。
こんな悲しいことが起きている中での珍事は、まともに動くはずの脳をどっか盛大にぶっ壊してしまったのだろうかとも思う。
だから、このことは、ももの最期の叫びだったのかなと、思えてならなかった…。
「まだ、生きていたかったんだよっ!」
ももは、それを伝えたかったように思えてならなかった。
(だとしたら、坊さんには申し訳ないなと思うのだけど…)
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ももとの最後の思い出ー回想記10 に続きます。
[1回]
2018/05/23 (Wed)
出来事
Comment(0)
2018.04.27
ももとの最後の思い出ー回想記8
続きます。
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11
月30日 もも‐寺に着く…、そして…
車から出るのが嫌だった。物凄く嫌だった…。
もう、問答無用でももは、真白な骨になってしまうのだ。そう思うとまた泣きたくなった。
火葬をするのだから当たり前だといっても、わかってはいるものの、それは残酷でしょうがなかった。えらく無慈悲で残酷に思えた。
「ももを燃やしたくないよお…」
車から出たものの、ももの入った棺桶を抱きしめる。
「おいおい、行くぞ…」
父親があきれて寺に向かう…。母も確か着ていたと思うが、全然覚えてない…。(母は別の車で寺に来ていた)
(いきたくないよ、いきたくないよ、いきたくないよ…)
涙がまたこぼれそうになる。もう聞き分けの悪いガキのように、泣き崩れそうになる。
9時の予約をして、寺に来たのに、ここで、私がももを抱きかかえたまんま、どこかへ逃走したらシャレにもならないだろう。
そんなことをしたって、ももは喜ばない…。何も解決しない。
そんなことはわかっている。
それでも、そんな考えは浮かぶのだ。ももの死を納得なんかできやしないのだ。
泣きそうになりながら、ももの棺桶を抱きしめながら、歩いていく…。
もう、ももを抱っこするのは、これが最後なのだ。もう二度とももを抱きしめることはない。
二度とない、永久にない…。
棺桶はやたら重いようにも、やたら軽いような気もした。
「おはようございます」
お寺の坊様の声がした。張りのある声だ。
寺の中にある火葬場に、来たくもないのに、私とももは付いていた。
火葬場は以前来たときよりも新しく大きなものとなっていた。
そういや、ここに来るのもずいぶん久しぶりのことだったんだと思う。20年ぐらい前の話だ。
えらく昔である。以前うちの猫のちーちゃんが死んだ時以来なので、そりゃ、随分経っている。
その長い期間、ももはももとして生き続けてきたのだ。
火葬場が新しくなろうが、なんだろうが、悲しいものは悲しいのだ。それは変らない。
そんな事実を漠然と感じながら、台の上にももの棺桶を置き、蓋を開けた。
ももは相変わらず、静かにのんびりとリラックスしている顔で寝ていた。
流石に起きないともう骨にならなきゃいけないというのに、呑気にこのあとに起きる現実なんて全く知らぬげに寝ている。永遠に寝ている…
(ももちゃあん、起きてよ…。起きないとお前、骨になっちゃうんだよ…?)
そんなことを思う。わかってはいるのだ。
でも、思わずにはいられないのだ。私は耐えられないのだ。こんな可愛いももが、あと少しで、真っ白な骨になってしまうのが信じられないのだ。
正しくは信じたくないのだ。
もう見ることは叶わなくても、この可愛らしいももの姿を、御骨の姿にしてしまうのが嫌だった。えらく惨いことに思えてならなかった。
こんなにも可愛いももの顔、こんなにも賢くて理知的で愛らしいももの目、
私の声を聴いてくれていた可愛くて大きな耳、以前交通事故にあったせいで、ほんのちょっとだけ切込みが入っている。
柔らかく優しいももの肉球、長くて綺麗で、私をじゃらそうとしていたもものしっぽ、
普通の猫ではまず出せない、強烈な猫パンチを繰り出したももの実はちょっと逞しい手、
時々、いや結構の頻度で、2足歩行をくりだして驚かしてくれた足、強烈な猫キックを、シャンプーしてやる時にくらわしてくれもしたっけ…。
優しくもふもふしていて、なんとも安らいだもものお腹、なでなでをいっぱい要求したっけ…。
ほんわかしてなんともいえない、ももの香りがしたなあ…。
そんなももの愛しい体が、もう消えてしまうのだ…。
もう機能しなくても、動かなくてもいいから、ここにずっと置いておきたかった…。
わかっている。ほっとけば腐っていってしまい、それこそ惨い姿になる。臭くなる。
いや、仮に冷凍しておくといったって、ずっとそのままの姿で置いておくといったって、
きっと私は耐えられなくて、壊れるだろう…。
それはわかっているのに、辛かった。
キツつて、狂って、壊れそうだった……。
私にできるのは祈ってやることしかできないのだ……。
(ももが安らかに天国へ行けますように…)
そんなことぐらいしか、私にはできないのだ。それこそ何も…。
手を合わせて、坊さんの御経を泣きながら聞いた。
勝手に涙が出てきた。情けないが、勝手に涙は出てくるのだ。
坊さんの経を唱える声が、ももが死んだんだと納得させるように、なんだか響いた。
(どうぞ、ももよ、安らかにね…)
ももよ、私もいつかそちらへ行くのでしょう…。
ただまだ死ねないから、待っててね…。
私がそちらへ行く時には、迎えに来てね。
その時には何か、君の好きなものをお土産に用意しておくよ。
しばらく、お別れだね…。
(19年と4カ月、ももちゃん、お疲れ様です…)
そんなことを、思いながら、祈りながら、手を合わせる…。そんなものぐらいしかできない
…。
御経は長かったのか、短かったのか、覚えていない…。
ただただ、もものことを思っていた。
やすらかにももが天国へ行けるように…。
途中で、線香もあげたような気がする。
ももの魂の安寧を祈って、線香の煙の消えゆくさまを、何故か見ていた…。
本当に妙に見ていたのだ…。
本当にももは死んでしまったのだ。いやわかってはいる…。
だが、このどうしようもない悲しみはどうしたらいいのだ???
ももの死がわかりたくない気持ち、ももの死を認めたくない気持ち、どちらにしろ、
悲しい、悲しい、悲しい…。
何故、私を置いていくのだ?
ずっといっしょだといったじゃないか…。ずっと一緒にいるって約束したじゃないか…。
私が60歳になるまでは生きてる予定じゃなかったのかい?
まだまだ私が60歳になるには、遠すぎるぞ。まだなのに…。
人間はどうして、長生きなのだろう?泣けてくる。
私の人生の大部分にももは接してきたことになる。ずっと私のそばで、私や家族を見守ってくれていたももなのだ。
あんなに暴れん坊で可愛くて、賢くて、人間臭くて、素敵なももちゃんだったのに、もう今は
物言わぬ躯になっている。
子猫の時から、大人の猫になり、いつのまにか、ばーさま猫になり…、けれども、いつまでも若く逞しい美しい猫だった。
まるで、年取ることなどを忘れたかのように、いつまでも綺麗で若くて、パワフルで可愛くて、
そして、優しい猫だった…。
ももよ、こんなに素敵でかわいい猫いないぞ?
可愛くて、素敵なまんま、あの世にいってしまったのね…。
私は、君を失って、ただただ慟哭するしかないのだ…。
御経が終わり、最期にももに言葉をかけた…。もういよいよなんだなと心がバキバキと痛い。
「ももちゃん…」
最期のなでなでだ。ももの頭を撫でで、顔を撫でる…。
もう、硬くて、ヒンヤリして硬くなって、猫ではない物体になってしまったような気がした。
ぐしゃぐしゃ泣きながら、ももを撫でた…。
もう、諦めて骨になるのを見送るしかない…。もう、ももは…。
(最期のなでなでだよ…)
いっぱいなでなでをしたようにも感じて、ほんの少ししかなでなでをしてないようにも感じた。
この時間は長い様な短い様な不思議な感じがしたが、やはり短かったと思う。
ももは、いつものように、満足そうに笑っているように見えた。
私はぼろぼろに泣いて見苦しいことこの上ないのに、ももは最後までどこまでも、美猫なももだった。綺麗な顔で、柔らかに穏やかに笑っている。
いつものように、柔らかい、なんともいえない可愛い顔で眠っている…。
もう、これで、ももの姿を見るのは最後だというのに…。
いつものように、ふにゃあとした、それでも可愛い顔を、何も崩すことなく、そこにいる。
「もも、19年と4カ月、お疲れ様でした。もう、私は、悲しくて悲しくて仕方がないよ」
私は知らず知らずのうちに言葉をかける。
もう魂のないももに、私はいうのだ…。
「さよなら、もも…」
こんな言葉吐きたくなかった…。
「もも、しばらくお別れだね。私は待っているからね。君が来るのをまっているからね」
そんなことをいってまた泣いた。
なでなでしながら、そんなことをいって泣いていた…。
(泣くなよ…)
そんなことをいいそうな顔をももはしている気もした。
この子は、そうだ。私が弱音はいてたり、情けなかったりすると、そんな顔をして、私を見て、
応援してくれる優しい猫だ…。
(御骨になってしまうのに、無茶いうなよ…)
私は泣くしかない…。私を置いて、ももは逝ってしまったのだ…。
(ももちゃん…)
もう、言葉にも何もできなかった。悲しくて、悲しくて仕方がない…。
こんなにもシャレにならないのは久方ぶりだ。
友人が亡くなった日も、慟哭してなんとも、悲しくて、悲しくて仕方がなかったことを
唐突に思い出す。でも、その時は、ももがいた。
ずっと、優しく寄り添っていてくれた。そんなももは、もういない…。
哀しみを癒してくれた。生きていこうねとそばにいてくれた…。
でも、そんなももは、もういない…。もういない…。もういない…。
泣くしかできない。泣いても何も解決できないことなんか、嫌でもわかる。
けれど、それ以外に、私は何もできないのだ…。
ただの人間である私は、死者であるももを見送ることしかできない…。
「またね…」
サヨナラは残酷すぎる気がした。 そういって、私はももから離れた。
父も母も、私の後に、いや、前だったか…?なんだか、はっきりしないけれど、とにかく、ももに触れて、何かを話していた。が、何も私は記憶していない…。
きっと、ももへの言葉を話していたんだろうというぐらいのことはわかるけど…。
お別れの時間は過ぎた。あっというまに過ぎた…。
(ももちゃん…)
こうして、ももちゃんは火葬炉の中に入れられ消えていく。
扉が閉まって、もう二度と可愛い姿は見れなくなった…。
火葬炉の扉が閉まる音が、無情に響いた。
あとは、ももが御骨になるのを待つだけだ…。
すべてが無情だった。えらく酷く無情で、虚無でどうしようもなかった…。
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ももとの最後の思い出ー回想記9 に続きます。
[1回]
2018/04/27 (Fri)
出来事
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2018.04.13
ももとの最後の思い出ー回想記7
続きます。
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11月30日 ももと寺に行くー自動車の中
父の車で寺に向かう。ももは棺桶の中に眠っている。最期の私の膝の上だ。
もう二度とももを膝の上に載せることはないのだ。ほんのちょっと前まで、ももは甘えて膝にででんと乗って、甘えてきたのに…。
いつまでたっても、可愛いももちゃんだった…。歳を取ろうが、態度がでかかろうが、すべてがすべて、可愛い猫なのだ。
もう、動くことはないけれど…。
(もも、もう起きないと骨になっちゃうんだよ? お前は本当に可愛くて仕方ないのに、もう無慈悲に御骨になっちゃうんだよ?)
こころでも語り掛け、実際にも多分口に出していたと思う。
でも、動かない…。無慈悲にまったく動かない…。
永遠にももは静に眠り続ける。それでも、ももの魂は私の傍の席に並んでいて、私を見ているような気がした。(気配がした)
わかっているけど、受け入れられるものではなかった…
後部座席はただただ静かだ。車のBGMで、なにかクラシック音楽が流れていたが、さらさらと何も残らずに消えていく。
天気は曇っていた。ももが死んでから、ずっと晴れていたのに、今日はうすらぼんやりと曇っていた。でも、そんなの別にどうでもよかった。
(なんで、ももちゃんをあの世に持っていくのだろう…? 私の行いが悪かったのか…?)
そんな気がしないでもなかった。
私がもっとすごい人間だったのなら、もも、お前はもっと生きてくれたのか?
なんともいえず、棺桶越しにももを抱きしめる。
「もっと生きててほしかったよ、もも…」
ももの生きた19年と4カ月の月日は、長いはずだけれどやたらに短く感じた。
「人間の年齢に換算すると、猫の年齢が19歳なら、人間でいうと90歳だから、まあ長生きなんだろうけど、もっと長生きしてもよかったんだよ?」
私もこのセリフを何度言ったのだろう…。
「ばーちゃんが亡くなった歳と同じになるんだよ」
ばーちゃんは、私の祖母である。そして、父の母親である。なんだか、強烈な御人で90歳で亡くなった御方だ。そういえば、以前うちに来た時、扱いの難しい、どうにも対応が難しいばーさんだったけど、ももは見事に対応していたなとか思いだす。
ももは、べたべたに甘えることなく、かといってつんつんするわけでもなく、ほどほどにいい感じで、ばーさんの対応をしていたのだった。
そのばーさんと同じ天国に、ももは行ってしまったのである。
わたしは、ばーさんが正直羨ましくなった……。
私がそちらにいくのは、いったいどれくらい先の未来なのだろう……?
とりあえず、まだそこへいく気はないけど…。
「生きるのが疲れちゃったのかな…」
「まあ、19年だしなあ…昔の猫はここまで生きるなんてなかったぞ…」
父親がふとそんなことを答える。
「今の猫は恵まれているよ…」
そりゃそうかもしれない。けれども思ってしまう。
「どうせなら、もっと恵まれて、もっと長生きしてくれればいいのに…」
本当に心底そう思う。
「いきなり、あの世に行くなんて、あんまりじゃないか…」
ちょっと前まで、豪快に猫缶の御飯食べていたんだよ?
ちょっと前まで、なでなでされて、ごろごろいっていたんだよ?
ちょっと前まで、父親や母親の股間にででーんと座っていたんだよ?
ちょっと前まで、弟と一緒になかよくゴロゴロしていたんだよ?
ちょっと前まで、私はももにブラッシングをしてたんだよ?
ちょっと前まで…。ちょっと前まで…、ちょっと前まで…。
永遠に”ちょっと前まで”の思い出がぼこぼこあふれ出る…。
まるで、忘れないでねと言っているように。忘れるわけがないじゃないかっ!
ももよ、貴方は私の大切すぎるぐらい大切な、愛しの猫、愛しの家族、愛しの相棒なのだから。
永遠に忘れるわけがない。
時が過ぎれば、悲しみは多少は穏やかにはなるのかもしれない。
でも、恐らく私は、君を忘れたくなくて、心に爪を立て、忘れることを拒むだろう。
忘れるのが嫌で、私は足掻くのだろう…。
「もも、お寺に着いちゃうよ…」
もう、ここに来たら、生き返る可能性なんてなくなるのだ。
火葬されれば、ももは真白な御骨になってしまう。
いや、もう寺に来ようが来なかろうが、もう生き返るわけはないとわかりすぎているのに、御骨になっていない状態なら、ひょっとして生き返るのではないのかと思ってしまうのだ。
今の自分は、もうどうしょもないぐらい壊れているのだろう。
ももが亡くなって、ももが死んだことを認めたくなくて、でも頭ではももが死んでいることが惨いほど理解できてて、自分が狂っているのと自分が半分ほど消えていっているのが、無情にわかるのだ。別にそんなものわかったところで、ももは生き返りはしない。
わかってはいる。
「いっしょに生きていこうねって、いっしょに美味しい思いしながら生きようっていったじゃないか、もも…。私はお前を火葬したくないぞ…。お前はこんなに可愛いのに、燃えちゃったら、骨になっちゃうんだよ?」
永遠に眠り続けるももにいう。
本当にそうだ。
ももの可愛らしい顔も、猫離れしていた賢い頭脳も、綺麗で理知的な目も、長くて素敵な尻尾も、柔らかくて上質な毛皮も、ぷにぷにでかわいい肉球も…、etc…。
すべて、火葬はそれらを燃やして、消してしまうのだ…。
命が消えただけでも残酷なのに、姿も容赦なく消してしまうのだ…。
「…。ももを剥製にするわけにはいかんだろう…」
父親はいう。
「…。わかっているよ…。ももを剥製にしたいけど、できないよ…。惨いでしょ、それは…」
私はいう。
「でも、ももの姿がなくなるのが悲しいんだ…。こんなに可愛くて、こんなに素敵なものなのに、骨になっちゃうんだよ?」
どんなに可愛い素敵なももでも、哀しく無情なカルシウムの塊になってしまうのだ。
「そりゃあ、火葬だからな…」
わかっているよ、そんなこと…。
自分の感情的な思いにどうにもイライラする。
”女性は感情的だから”という上から目線の決めつけた言葉が、ふいに頭をよぎっていく。
この言葉は物凄く嫌いで苦手だ。理解してあげているんだよと偉そうに言わんげな言葉が、なんかバカにしているようで、心底ムカつく。
感情的なのは男性も女性も変わらない。なのに、なんなのこの偉そうな言葉はっ!?
そんな風に思えて、不快である。
が、それがいつも以上に、酷くイライラした。あまりの悲しさに、心にいろんなものがあふれまくっている気がした。壊れている、壊れている…。
感情的よりも、悪質だ。ももを失った悲しみが、狂気になり、理性を壊し、まともじゃないわけのわからないカオスにしていく。
辛うじて、それでいてももへの思いが、同時に私をぶち壊れないように抑えている。
この、思いはなんといったらいい?
「そういえば、弟がいってた…」
なんかしゃべってないと気が狂いそうなので、しゃべることにした。
「なんだ、急に…」
戸惑ったように父は答える。
「ももの御骨、家に持ち帰らないでいいのか? っていってた…」
「なんでまた…、いっぱい仲間がいるわけだから、ももも寂しくないだろう?」
「ももは望むのかなっていってた…。ももは猫嫌いの猫だから、お寺に置いておくのがかわいそうな気がするていってた…」
私が理由をいうと、父親は黙っていた…。
ここの御寺では、亡くなった動物たちが御骨の状態で一種間ばかり礼拝堂に祀られていて、また今までに亡くなった動物たちの位牌みたいなのが、ずらっと沢山並んでいる。
(ちなみに御骨の状態で1週間ほど経つと、今度は納骨堂に入れられる)
「ももは、うちの人間大好きな猫だから、うちに置いてあげたいとは私も思ったね。寂しくないように、うちに置いてやりたいって、弟は言ってたよ」
「そんなこといっていたんだ…」
父は、そうつぶやいた。
「私もそう思う…」
「おいおい、だが、何処へ置くんだ? お前の部屋に置くのか?」
「それでもいいよ、もしくは、うちの庭に埋めてももいいけどね」
「部屋に置くんじゃ、ももだって落ち着かないだろう? というか、うちの庭のどこに植えるんだ??? 埋めるところないぞ?」
「そうそれなんだよ、うちの庭、植物がぼーぼー野性化している状態だから、どうにもきれいじゃないというか、バッチいというか、埋めたらももがかわいそうな気がするのよ」
「…。おいおいそりゃ酷くないか?」
「うん、といいつつ、あびの時は、庭に埋めたけどね。火葬にしないで土葬だね」
ちなみにあびは随分昔に、保護した小さい子猫である。アビシニアンに似ているからという理由であびという名前にしたのだ。
が、なんと3日後には、あっというまに亡くなってしまったのだ。
接した期間は、物凄く短いけれど、可愛くて人懐っこくなった猫だった。
その猫は、”ここにいれば、猫も時々うちは来るし、寂しくないだろう”といって、私がにうちの裏庭に埋めたのだ。ちなみに土葬である。
「あびはいいんだ、それで」
いう父親はいう。
「なんでよ?」
「あびは小さいから、庭に土葬でもいいんだ。ももはでっかくなったから、ちゃんと火葬したほうがいいだろう?」
「どーいう理屈だ!?」
ちなみに、今回のももの死体の処理の方法は、あっという間に、お寺で火葬して預かってもらうことに、当たり前のようになってしまってたのだ。
「ももは大きくなったから、お経をあげて火葬してやるべきだろう?」
父親はいう。
「!??まあ、お経はあげてやりたいからなあ… でも、あびも火葬にしてやればよかったかな…」
「まあ、あびは小さいから、土葬でいいんだ」
確かにあびは小さかった。
何せ大人の手のひらに、ちょこんと乗ってしまえるサイズだったのだ。
しかし、小さいから土葬って…。うーんどういったらいいのだろう…???
「うーん…。とりあえず、ももにも、あびにもこれからは、せめて、時々お経のCDでも聞かせてあげよう…」
私は、多少落ち着いてそんなことをいった。
「って、そんなもの持っているのかっ!?」
「当たり前じゃない?」
驚いたような父親に私は答える。
「おいおい…。そんなもの何処で買ってきたんだ???」
父親は呆れている…。
「店」
私は即答する。
「いや、そうだろうけど…」
「ちなみに、そのCDは近所のコンビニで売っていたから、興味がわいて買ったんだ」
「な、なんでまた…」
「癒しだよ。リラクゼーションだ。たまにはお経を聞きたくなることもあるでしょ?」
「…。わからん…」
なんだか、父親は複雑そうな顔していた。
でもなんでだろう、その時、ももが棺桶のなかでふふっと笑っている気がした…。
棺桶の蓋はしまって、姿も見えないが、何故かそんな気がしたのだ…・。
寺が近づいてくる…。もう、いよいよだ…。
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ももとの最後の思い出ー回想記8 に続きます。
[1回]
2018/04/13 (Fri)
出来事
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2018.04.02
ももとの最後の思い出ー回想記6
続きます。
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11月30日 朝 ももちゃんー寺へ行く前のお別れ
「あら~、おしゃれな棺桶ね~。でも、ちょっと大きすぎない?」
能天気すぎるぐらいの母親の声がやたらに響いてカチンとする。
「燃やしちゃうのが勿体ないわねえ…」
わざと神経を逆なでしたいのか、母親はそんなことをいう。
「…。棺桶を用意してくれたの?」
私の声はえらく尖った声になっていた。本当にイライラとした。
「え、そんなもの用意してなんかないわよ」
ぽかんとして、寝間着姿のいまいちな格好の母親はいう。
「用意もしてないのに文句を垂れられて、ケチ付けるっていうのはなんなんだろうね…」
正直に言うと母が物凄く憎たらしかった。
「何、怒っているの?」
「別に怒っているんじゃないよ。呆れ返っているだけ」
本当に私は物凄くあきれ果てていた。
更には母親は、
「ももだから、ピンクのガムテープでがっちり閉めないとね~」
とか、けらけら笑って言ってくる。
「ちょっと待ってよ。それは可愛そうじゃないか? 最後なんだから…。がっちり閉めるってなんだよ…。少しはこの我が家を感じさせてあげたいじゃないか?」
「えー?死体が飛び出しちゃわない?」
笑っていうことか、母よ?
「まず大丈夫でしょ。かなり深さもあるんだし」
箱の高さは30cmはある。
「それにがっちり閉めるって…。なんか密閉されて可哀想じゃないか?」
「もものことについては、本当に気を遣うのねえ~」
母親はなんだか厭味ったらしく言う。
「大事な御方だからね」
「あっ、そう…」
なんだか知らないが、母親は母親で私にイライラしているらしい。
「何をいいたいんだか知らないけれど、不必要なくだらない事ならいうのはやめてくれ。そういうのは、おかーさんの大事な友人とやってきてくれ」
「え、そんなことしたら、友達がかわいそうでしょ?」
母親は驚いたように言う。
じゃあ、私ならいいのか? おそらくいいというだろう、この人は。
わかりきっていることだ。
「だからって、私に絡まないでくれる?くだらない。少なくとも今日はいらいらさせないでくれ。今日はももちゃんとの最後の別れなんだから。
もっともそれを押してでも、私はおかーさんの話とやらに付き合わないといけないか?
あまり重要そうなものはないと思うけどね。重要なら仕方ないから、残念だけど聞くけど…」
私はえらく無表情に淡々といっていたと思う。
母親はなんだかむっとしていた。でも、知るかと思う。
まあ、こんな調子なので、えらく機嫌も悪くなる。
穏やかにももを送り出してあげたいのに、なんでこうなるのだろう…。
そんなもので、朝ごはんなんか食べたって、そんなもの何が出たかなんて覚えているわけでもない。今となって思いだしても、”なんか食事”だったぐらいである。
「お寺にももを持っていく前に、となりのENDOWさんに、ももを見せてあげよう。ももを大切にしてくれたし、ももがお世話になったかただしな…ももだって、最後のお別れしたいだろう…」
何を食べたかまったく思いださない食事後、父親がそんなことをいった。
「そりゃそうだね…。ももがお世話になったわけだし、ももだって、最後のお別れぐらいしたいでしょ…」
ももちゃんはENDOWさんが大好きなのだ。
何せ、ももちゃんは、時々我が家を抜け出し、ここの御家におじゃましているぐらいである。
ももちゃんは、そこでENDOWさんの家で、御一家と一緒に花を観賞している仲なのである。
そして、とてもENDOWさん夫婦は、ももを大事になさってくれていたのだ。
ももちゃんにとっても大事にしたい人達なのだ。もう態度でわかる…。
「このピンクのタオルでもおせわになったしな…」
父親はいう。そのピンクのタオルにつつまれて、ももは気持ちよさそうに寝ているみたいだった。本当に何度見ても死んでいるように見えなくて、何度も確認してしまう。
「いこう…」
「ああ、そうだな」
そういって、私と父親は、ももを持ってとなりのENDOWさん宅へいった。
「おはようございます。ENDOWさん。ももの最期のお別れでやってきました…」
ももの棺桶を抱えていた父は、そっと玄関先の床にそれを置いた。
ENDOWさん夫婦はすぐに、うちのももを見てくれた。
「ももちゃん、本当に亡くなったのね…」
ENDOWさんの奥さんは、なんともいえない悲しい顔をして、花や好物にかこまれて、ピンクのタオルにつつまれたももを見ていった。
「まるで、安心しきって眠っているだけに見えるのに…」
声は涙が含まれていた。
本当に、ももは眠っているようにしか見えない…。
「…。うん…。声かけたら、起きそうなのに…、ううーんとかいって、起きそうなのに、もう、起きないんだ…」
「本当に、ももちゃん綺麗だねえ…。たまちゃんは、もうボロボロであの世にいっちゃったからね…」
ENDOWさんの奥さんはいう。
「たまちゃんは、苦しんで死んじゃったから、それから比べると、ももちゃんは本当に綺麗だよ…」
ここのENDOWさん宅で飼われた猫であるたまちゃんは、闘病の末亡くなったのだ。
闘病の末、苦しみながらぼろぼろになってしまい、亡くなったらしい…。
結構前の話だ…。もうずいぶん経ったと思う。
確か弾はその時17歳か、18歳ぐらいであった。
「ももちゃんはね、たまちゃんが亡くなってから、時々来てくれるようになったの。それも、ちゃんと玄関から、うちに入ってきてたの…。うちでお花を見て、私やうちのお父さんの相手をしてなごんでいってたの」
奥さんは更にいう。
「玄関から入るってあたりが人間ぽいというか…」
なんだか、それがももらしくて泣けた。私は不覚にも泣いてしまう…。
「お行儀いいねこちゃんだったのよ、ももちゃんは…。玄関で呼び出して、開けるとおじゃましますって感じで入ってくるのよ…」
「なんていうか、いつのまに覚えたんだ???と思うけど…」
本当にももは人間の作法というかマナー?を、どうにも覚えているところがあった。
人間臭くて、かわいい猫なのだ。
「まあ、ももだから、人間の事は覚えちゃったからな…」
と父親はいう。ああ、19歳と4カ月のキャリアは流石であるということか…。
「癒されたよ、ももちゃんには…」
奥さんはいう。
「ももなりにわかっていたんだろうな…。たまちゃんがいなくなったことも…。で、元気になってほしくて、行ってたんだね…」
私はいう。そういうしかない。
「うんうん…時々ね、遊びにやってくるのよ…」
「最近はもう、病気の関係でお外に出ないようにってしてたから、多分スキをみて、やってきたんだね…。いったいどこにスキがあるかと思うぐらい、巧みに外へ出ちゃうのだものね…もう、凄かったよね…。でもごめんね、ももちゃん。私はももの病気の関係上、外に出すのをほいほい許可するわけにはいかなかったんだ…。ごめんね、ごめんね…」
どうしようもなかった。
「それはわかっているよ、ももちゃんは…」
「獣医にも注意されたし、私はももを守りたかったし、どうにも…。守るためには仕方なかったけど、ENDOWさんちにいきたかったんだろうな…。もも、ごめんなさい…」
本当にこれは申し訳なかった…。もものことを考えた行動だったし処置だったけど、ももはどう思っていただろう?
「わかっているよ、ももちゃんは…」
奥さんはいう。
「ももは、ENDOWさんのこと大好きだから、もっといっぱい会わせてやればよかった…」
本当にぼたぼた涙がこぼれる。
「何をいっているのよ。ももちゃんが大好きなのはあなたでしょうよ…」
「そうかあ???」
思わす奥さんの顔を見た。
「見ていればわかるよ…。ももちゃんはいっつも綺麗で、時々、首輪も変わっていて、御守りもついているし。愛されているなってもうわかるわよ…。こんだけ、猫に愛情を注いでいるんだもの…。ももちゃんは、あなたのことが大好きだよ…」
涙がぼたぼたこぼれた。
「そりゃあ、できるだけのことはしてあげたいもの…」
「可愛い首輪、いつもしているのね…。この、いま、ももちゃんがしている首輪もかわいいもの…」
ENDOWさんは、ももに付けていた首輪が変わっていたのも気づいていた。
「…。これ、新年になったら、ももに付けてあげようって、思ったんだ…」
そうである、今、このももに付けてある首輪は、私がももの為に買った首輪だ。
新年に付けようと思った。首輪だ。これは、ももが死んだ翌日に付けたのだ。
「ももが、亡くなった時、俺はもう、ももの人生が終わったわけだから、自由にしてあげようって首輪を取ったんだけど、由羅がね”そんなことしたら、ももが捨てられたって思って悲しくなるでしょう”っていって、この首輪付けたんです」
父親がそう告げた。
「ももちゃん、喜んでいるよ…」
奥さんはいう。
「…。ももには何もしてあげれなかったから、せめて、新年につけるはずだった首輪ぐらいつけてやろうと思ったんだ。そのかわりといっちゃなんだけど、今までの首輪は形見にもらったんだ…」
「うんうん…。ももちゃん、首輪かわいいよ、似合うよ…」
そういって、奥さんはももの頭をそっと撫でた。
「その首輪は俺もいいと思う。付ける以上は、変な首輪なんかつけたくなかったんだ…」
更に父親はいう。
「ももちゃんは、いつもいい首輪してたものね…。で、時々変わると、おねーちゃんが変えたんだなと思って見てた…」
ENDOWさん(旦那さん)もそんなことをいう。
「ももちゃんも、首輪ボロボロにしちゃうから時々変えないとね…」
本当にそうなのである。動きがアクティブなせいか、ももの首輪は結構痛んでしまうのだ。
で、私は、どんな首輪がももには似合うかなと、いろんなお店で探していたのである。
「今思えば、もっといい首輪買ってあげればよかったね、もも…」
本当にそう思う。
値段がリーズナブルなものも、ちょっと高いものも買った。
だけれど、もっと高級な首輪を買ったら、ももは喜んだかな…?そんなことを思う。
してあげれなかったことが、ばんばん頭に浮かんできた。
こんなに酷くあっけなくあの世にいってしまったももだから、もう、ももの為にしてあげたかったことが、またどんどん溢れてくる。
「ももちゃん、喜んでいるよ…。こんなに安心しきった顔で寝ているんだから…」
「こんなに和むような顔しているから、どうしても死んでるようにみえないんだよ…。わかっているけど、ももちゃんって呼んじゃうんだよ。でも何度呼び掛けても起きないんだ…」
自分でもわからないうちに言葉が出てくる。
「本当に死ぬ前は化け物かっていうぐらい凄まじい顔になっていたんだ。相当苦しかったんだと思う…。慌てて抱きあげて、ももちゃん、ももちゃんっていって、でもこうしちゃいられないって、籠をもってきて獣医さんに連れて行こうと思って…、死ぬなんて思えなかったんだ…」
本当に死ぬなんて想像できなかった。
苦しんでいるだけだ、だから急がなきゃ!そう思っていた。
「死ぬなんか思わなかったから…、こんなことならずっと抱いてあげればよかったっ!獣医さんに連れて行かなきゃなんて考えないで抱きしめてあげればよかった…」
また涙はぼたぼたこぼれる。
「それは仕方がないよ…それは…」
奥さんはそういってくれたが、やはりこれは後悔しかできない。
もし、そうしてれば少しは良かったのではないだろうか?
一瞬床に置いたことで、ももは見捨てられたと思ったのかもしれない…。
気が付いてすぐにだきあげたけど…。
「ももを床にそっと置いて、籠取りに行こうとしたら、動かなくなって、慌てて駆け寄って抱き上げたら、ももちゃん、私を見てふっと軽くなったんだ…」
もう、あの感触は忘れられない。あのふわっとすーっと何かが消えていくあの感覚は忘れられない。あの儚過ぎる喪失感は、本当に無情で虚無なのだ。
「あっという間に、ももの目から光が消えて。、最期にももが見たものは、私だったんだ…。でもって、化け物みたいな顔があっというまに、いつもの美形なかわいいももちゃんに戻って、穏やかになっちゃって…。苦しんでいたことが嘘みたいにさ…。で、もうぐんにゃりとして、いつものぐんにゃりじゃない、ぐんにゃりで…、流石に私は狂ったと思う…」
本当にぐんにゃりなのだ。無慈悲なぐんにゃりなのだ。
魂の欠片すらない無慈悲なぐんにゃりなのだ。
「ももちゃん、大好きな人に抱かれて亡くなられたのね…。由羅ちゃんのこと大好きだから、嬉しかったよ、幸せだよ…。だから、こんなに穏やかな顔なんだよ…」
奥さんはそういって、ももの頭をふたたび撫でる。
「本当にきれいでかわいいねえ…。」
「ももは美形な猫だから、最期まで美猫でいたかったんだ…」
ももは死んでもももなのだ。揺るぎなくももなのだ。
「ももは死んでも、しばらくずっと柔らかいまんまで、しなやかだったんですよ。普通すぐに硬くなっちゃうのに、不思議なぐらいずっとやわらかいまんまで…。きっとみんなに撫でてもらいたかったから、綺麗なまんまでいたんだよな…」
父親がまた繰り返す。
「本当に死んだように見えないよ…。ただ、ぐーぐ寝ているようにしか…。このまえ、ももちゃんは2日間連続で、我が家に来たから珍しいって思ったら…、珍しいこともあるんだなって思ったら…」
旦那さんが、思いだすように言う。
「ENDOWさんが好きだから、会いに行ったんだね…」
私のスキを見て、ももはENDOWさんちにいって、和んで癒しをあたえて、また我が家に戻ってきてたんだ…。私に「ただいま帰ったよ」という顔をして…。
私は「もう、腎不全なんだし、体調の事もあるし、獣医さんにも外に出さないようにって注意されているのに…」をぶつくさいいながら、結局ももを撫でていた。
ももは、うふふという顔をしていた。まるで、「まだまだだね」という顔をして…。
おそらく、ももは私の気持ちもわかっていたけど、ももの思いは止められるわけはなかった。
けれども、もしものことが起きたらと思うと、私はやはりももちゃんを外に出してあげるのは、制限せざるを得なかった…。
もう、最悪の事態が起きてしまった今では、もっと自由にさせてあげれば良かったと、泣くしかできない…。でも、何がベストだったのだろう???
もう、外からももが帰ってきて、「お外出ちゃダメでしょう…」と私が言って、ももが「にゃあ」といって、おでこをすりすりする姿はもう二度と見れない。
ももは、私を置いてあの世に行ってしまったのだ…。
3年前、私の傍にいてあげるからと、頑張って復活してくれたももは、今回は奇跡を起こすことなく、今度は超特急であの世にいってしまったのだ。
まるで、3年間延長したから、ばいばいとでもいわんばかりに…。
「ももちゃんも、ちーちゃんもいる、たまちゃんもいる、ジョンもいるお寺に行くんだね…」
奥さんはいう。そう、そこにももちゃんはいくのだ。連れていきたくないけれども。
ちなみにジョンは、たまちゃんの前に、かなり大昔にいたENDOWさんちで飼ってらした大きな柴犬である。
私が幼少期のころの犬だった。でかくて、吠え方も怖かったけど優しい犬だったと思う。
「まだ、行かなくてもいいのにね。私を置いていっちゃうのね…。ももちゃんは…。私が60歳になるまで生きてろっていってたのに…」
「あ、あんた、そりゃ、いくらなんでも無理でしょ…」
奥さんは脱力して言う。私以外が脱力する。
「ちーちゃんはにゃ~って答えてくれて、ももちゃんは、にゃ~といってもくれて、ふふって笑って答えてくれたけど、ふたりとも、いっちゃった…。私を置いていっちゃった…」
「それはちょっと無理だろう…」
父親がツッコミをいれる…。まあ、確かにそんなことができたらギネス記録なんて、はるかにぶっとんだ長寿猫になるだろう。
「でも、すっと生きててほしかった…。いっしょにあの世は行きたかったな…」
私はそう思う。今だってそう思う。
「きっと、ももちゃんを迎えに、ちーちゃんも、たまちゃんも来てくれるよ」
奥さんは慰めるように言う。
「だねえ…。ももはワガママだから、ちーちゃんだけだと心配だって、たまちゃんも来てくれそうな気がする。たまちゃんは、何せうちの、ちーちゃんとももちゃんの面倒を見てくれた、できた猫ちゃんだからなあ…。猫ができている猫だからなあ…」
「あらあら…、たまちゃん凄い猫になっている…」
少しだけ奥さんは笑って言う。
「いや、何せ、うちのももが唯一仲良くできた猫がたまちゃんだったです。ももちゃん、うちに来てから、他の猫とは仲良くすることはなくてね…。ももちゃんは猫嫌いだったんだ…」
「あら、そうだったの?」
「なんていうか、自分の家族以外の猫で、仲良くしたのは、たまちゃんだけだったんだよ。もう、うちのももちゃんは、あるとあらゆる猫に容赦なくてね…。そのかわりといっちゃなんだけど、人間には結構愛想がよかったんだけど…。」
本当にそうなのだ。猫嫌いで、人間大好きなももちゃんなのだ。
「本当にたまちゃんは猫が出来た猫だから、ももちゃんが仲良くできた唯一の凄い猫だったんだ…。本当にありがたい御方でした。ありがとうございます」
「いえいえ、たまちゃんにも仲良くしてくれて…」
「きっと、たまちゃんにお世話になったから、ENDOWさんちにお邪魔しますってなったのかもな…。ももちゃんなりに、そうしたかったんだな…」
私はそう思った。
「…。ももちゃんは癒しだったね…。ホント、たまちゃんが亡くなってからくるようになったのよ…。玄関で鳴いて、呼び出して、ドアを開けると入ってきたの…。で、居間で一緒にのんびりして、お花を見て、見てないときもあったけど、和んで癒してくれたの…」
「ももなりに、ENDOWさんに元気になってほしかったから、いってたんだね…。 そんな気がする。ももは、ももは、ツンデレだけど優しい猫なんだ…」
もう、情けないぐらい涙は出ていた。
時間は容赦なく過ぎていった…。
「ももちゃん、あなたは立派な猫だよ。素晴らしい猫だよ。こんなにみんなに愛された猫なんだよ。知っているか…? こんなに愛されているのに、あの世にいきなり行くなんてあんまりだよおおお…」
ももちゃんは、まるでわかっているよといいたげな顔で眠っている。永遠に覚めない…。
「私はももが死んだこと、わかっているけど、認めたくないんだあっ!」
もう、泣くしかできない…。いったい私の涙はどれだけあるのだ?
もう、ぼたぼたこぼれる。私はこんなに涙腺の大破したよわっちい人間なのか?
それなりに強いと思っていた私は、ももによって作られた幻か?
「もも、もも、もも…」
(もも、もも、もも…)
心だろうが声だろうが、ももの名前を唱える様に、繰り返す…。
呼んでも、もう二度とももは反応しない。返事しない。可愛くうにゃともいってくれない…。
わかっているんだ、わかっているんだ…。
もも、わたしは、もうどっか壊れちゃったよ…。
それとも私は、ここにいる私は本当に生きているのか???
生きている、生きているけど、それが何なのだ?
壊れていくよ、壊れていくよ…
そんなことが頭の中を駆け巡る。ももとの思い出も駆け巡る。
すべてがぐしゃぐしゃになる…。
辛うじてぶっ飛ばない理性が、自分を自分でいさせてくれた。
「じゃあ、そろそろいきますね…」
ENNDOWさんとのもものお別れの時間も過ぎた。泣きそうになりながら、ENDOWさん夫妻は見送ってくれた…。
やがて、私は父の車に乗った。膝の上には、棺桶に入ったももを抱いて…。
「もも、いこうか…?」
こんな、残酷な日があるだろうか…。
そんなことを思うが、それに関係なく、車は走るし、時間もどんどん過ぎていく…。
無情だな…。
そう、ただただ思うのだ…。
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ももとの最後の思い出ー回想記7 に続きます。
[1回]
2018/04/02 (Mon)
出来事
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