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        ここは“にゃんこのしっぽっぽ-猫的徒然話”です。 ここでは猫好きな管理人の趣味大爆走で御送りする、 ねこねこしたブログになっていくでしょう。 ちなみに、やはり愛猫ももちゃんが出現する率は高いです。
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ささら 由羅
性別:
女性
趣味:
創作とか♪多趣味。
自己紹介:
どうも、ささら由羅と申します。COOLな猫好きな人間です。(まわりの人間いわく猫狂い、猫キチガイ)。
愛猫は、ももと申します。可愛らしく、そしてナカナカ気のつよ~い女の子でございます。どうぞ、よろしくお願いします。
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カエルの声で猫は鳴く

ももの御葬式から数日後のことである…。(これも、若干回想記になります)

ももの葬式が終わって、数日が経った。
ももがいるのが当たり前の生活だったから、どうにもももがいないのが落ち着かない。
えらく、寂しいのだ。もう酷く空虚だ。自分の中に大きな穴ができたようだなんて、そんな甘いものではない。その穴は巨大すぎて自分を潰してしまいそうなものなのだ。
穴が大きすぎて、自分が消えていく。そんな感じだ…。

ももちゃんは死んでここにはいないはずなのに、気配(!?)はするのだ。
感触(!?)もどこかする…。
どこにいるのだ、ももちゃん……?

そんな、休日だった。弟も今日は家でゆっくりしている。弟も休日だ…。

「おーい、ももちゃんのお参りいかないか? 納骨堂に収められる前に行こうと思うんだ」
私はこんな言葉を弟にかけた。
が弟は、ももちゃんの位牌の位置等細かい情報は知らない。そのため、私がご案内することにした。で、弟は言う。
「俺、ももちゃんの火葬の日行けなかったから、行くよ。罪悪感があったんだ」
そんなわけで、準備をして、お寺に行くことになった…。


いろいろ準備してから、車にのって、兄弟二人でお寺に向かう。
「そういや、ももの火葬をした日に、奇妙な猫がいたんだ…」
そんなことを話し始めた。
「ふ~ん?」
「げこげこって、カエルのように鳴く恰幅のいい三毛猫なんだけどね」
「へっ!?」
弟はちょっと吃驚したようだった。
「カエルの鳴き声をした猫だ。わたしゃ、はじめて見たよ…」
未だに思いだすと不思議な猫である。
「ふつ~、猫はげこげことは鳴かないぞ…」
「うん。でも、鳴くんだ…。たまたまなのか、なんなのか…」
そのままのことをいうしかない。
「なんていうか…」
弟はなんともいえないようだった。
「坊さんが絶叫するのも凄いけど、それもまた…」
弟には先日、葬式の様子を聞かせたのだ。もっとも、三毛猫のことは変った猫がいたというぐらいで詳しくはしゃべらなかったのだが…。
「なんか、ももが何やら訴えたかったんだなと…」
「生き返る気満々だな…」
弟は言う。
「望むところだ」
私はそう答える。
「蘇るってことで、カエルなんだな…。ももはダジャレの好きな猫なんだな…」
弟はそんなことをいう。
「ももだからな…」
結局そういう私である。
「ももは一生懸命伝えようとしたのかもしれないな…」
だとしたら、なんとももはやさしい猫なのだろう…。

「いいから、私のいうことを聞きなさいっ!!!っていって、その三毛猫に憑依したのかもな。いや、ももの事だから威嚇したのかもしれない…」
弟はふと考えていった。
ありえる…。ももは自分以外の猫が嫌いな激しい喧嘩っ早い猫でもある…。
「た、確かに…」
「ちなみに、そのあと私は、どうもとりつかれたのかもしれない…。私は何も口を動かそうとしてもないのに勝手に口が動いて、”蘇るだからカエルなんだ”っていうんだ」
「……」
「こうして、話すと我ながら危ない気もするんだが、私は声を出しているつもり、意識は無いのに勝手に口が動くんだ。なんか、変な感じだった…。なんかふんわりしててう~ん…」
あの時の感覚を表現しようとしても、本当になんとも表現しづらかった。
「なんかね、ももちゃんは生き返ってくれるんだって思えて、泣けてきた…」
「生き返る気満々だな…」
「ぜひとも帰ってこいだよ…」
思いうかぶももは、哀しいほど優しく可愛い…。
ももはやはり可愛いのだ。たとえ死んだとしても、この世にはもうその姿はないとしても。
酷く儚い白い物体になったとしても。


寺についた…。駐車場に車を止めて、位牌堂に兄弟二人で向かって言った…。

三毛猫はいた。
私と弟の姿を見ると、すぐさまとととっと恰幅のいい体をかるく揺らして、出迎える様にやってきた。

「おお、お出迎えしてくれたんだね。ありがとう…」
と私がいうと、三毛猫はふっと目を細めてこちらを見た。
「にゃごにゃご…」
三毛猫はそう鳴いて、ごろごろと喉を鳴らした。

「おー、今日は、この前より鳴き声が猫みたいになってる」
私がいうと弟は、
「へっ?」
という。
「ああ、このこが先ほど言っていた三毛猫ちゃん。ももが火葬された日、げこげこいって慰めてくれた優しい子なんだ」
「う、うん…。しかし、猫に鳴き声が猫みたいになっているって…、凄い表現だな…」
たしかに弟の言うとおりである。
「しょうがないでしょ。げこげこ鳴くのだから。流石に想定外だ」
「まあ、猫はげこげことは鳴かないよな…」
「…。ももちゃんは、以前、君が『わんと鳴け』といったら、頑張って『にゃん』って鳴いてくれたっけ…。あれは可愛かったな。ももちゃんはももちゃんなりに、頑張ってくれたんだな…。
う~んちょっと難しいなって顔したのも可愛かったな…」
かつてのももを思い出す。ごくごく自然に。
「あれは凄かったし、問答無用で可愛かったな…」
「なんでそういう展開になったのかは覚えてないけど、あれは衝撃的だったなあ…」
思いだすと愛しく切ないものだ…。
「そんな、可愛い猫なのに、今じゃコンパクトサイズの御骨だからな…」
哀しいったらありゃしない…。黄昏もする…。



位牌堂にて…。
仏像のもとに大小6個ぐらいの骨壺があって、そこの左の方にももの御骨はある…。

「ももはこれだよ。これがももの御骨だ」
生き物ではなく物体となってしまったももが悲しい。
もう猫ではなく、そんなに大きくはない骨壺に入った御骨なのだ。
「……。本当に御骨になっちゃったんだな、もも…」
弟はいう。本当にそうだ。こんな姿のももになってしまったのだ。

そんな私達を三毛猫はちょっと離れていたところで、見守っていた…。



「ももは喜んでいるよ。お前が来てくれて…」
「そうかあ? もも、ごめんな。火葬いけなくて…」
弟はそういう。
そんな、弟をももは、近くで見ているような気がした。
「絶対喜んでいる。絶対。 何故なら、ももだもの…。ももちゃんはお前の事大好きだからな」
「そうなのかなあ…。だとしら、ねーちゃんの事も大好きだから喜んでいるよ」
泣かせることをいう奴である。
「…。しょうがねえ奴だなあと呆れているかもな…」
そんな気もした。けれども、ちょっとあきれたように、それでもよしよしと寄り添ってくれるももはいない。それが物凄く愛しく哀しい…。
「そりゃねえだろ、いくらなんでも…。でも、なんか心配して、足元に来ていそうな気もする」
「だねえ。ある意味、ももちゃんは保護者だったからなあ…。お姉ちゃんというか…、母親というか、父親というか…」
「いっちゃなんだけど、うちの一家はみんな、ももにとっては、ももの子供だったのかもしれない。いや、孫か?」
何気に容赦のない弟である。
が、否定はできない…。
「うーん、ももが親分で、うちらが子分という図も成立するような…」
と私。そういや、いつのころから、甘えん坊だけれど、しっかりと親玉になっていたのだろう?
「まあ、ももだからなあ…。ももは若く見えても19歳だし…」
「人間御年齢に換算したら90歳だからねえ、ばーさんと同じになる」
そういって、再び、自分たちの実の祖母を思い出す。
祖母は90歳の時に亡くなったのだ。これからは、ももを思い出すたび祖母もセットで思い浮びそうである。

「逞しいばーさんだったんだな、ももは」
「ばーさんといってもばーさんじゃない気がする。老猫のはずだけど見かけは綺麗で体力あったし、猫パンチはまるで戦闘兵のような状態だったしね、年取っているようにはとても見えない…。まあ、最近ちょっと疲れたなって顔するときもあったけど、そこらへんかけまわっているし、とても”死ぬ”なんて思えなかったしね…」
「老いることを拒否した猫か…」
「本当にそうだよ…」
「だなあ…」
「まあ、19歳だから年はとっていたのは確かだけど、弱り切った姿なんか見せないであの世にいっちゃったんだから、なんとも凄いよ…弱ってもいいからずっと生きててほしかったけどね…」
「それは、ももちゃん嫌だったんじゃないか?」
「うん、わかっているよ。それでも思うのよ…。恐らく段々弱っていきながら死んだら、酷いなあて嘆くのだろうよ…。それでもそう思うのさ。我ながらバカだと思うよ」
溜息が出てくる。
「なんていうか、救いはももの死に顔がまるっきりいつもみたいに、ぐーぐー昼寝しているように穏やかだったことだ…。気が抜けるというか…。悲しいけれどなんか救われた気がする…」
「あれは本当にただ寝ているみたいだものな…」
「なんかの間違いでも正解でも、起き上がるんじゃないかと思ったけど、結局死んだままだった…。でも、本人だって死にたくはなかったと思うよ。でなきゃ、急須のありえないところが割れて、坊さんが絶叫なんてありはしない気がする…」
「生きていたかったんだよ!っていうももの思いか…」
「坊さんはとんだトバッチリだったかもしれないが、それはごめんなさいというしかない」
ももの骨壺をみながら、そんなことを思い出す。(※参照回想記9)

冥福を祈り、御線香をあげる…。
せめて、やすらかに天国へいきますように、虹の橋にいきますように…。
もっとも、ももの事だから早々と、私のいる場所はここじゃないっ!と二足歩行で、ダッシュで走りながら、この世に舞い戻ろうとしそうな気もする。
でもって、まわりの他の猫達が、ぼーぜんと見守っているか、唖然としているか…。

まあ、私がそれを望んでいるのだろうけど。そんな想像をしてしまう…。
ありえそうな気が思いっきりする……。思いっきり…。

もってきた写真を飾り、お供えのキャットフードも飾った。ももの大好きだったものだ。
こんなことになるのなら、もっとたくさん食べさせてあげればよかった…。
本当に後悔しかない…。

(ごめんね、もも、不甲斐ない飼い主で……)

「にゃーん…」
(え、ちょっと待て…???)
ももの感触???がした。
(ええっ!??)
慌てて、見たものの、それは当然ももじゃない。私達を見守っていた三毛猫だった。

「にゃあーん」
「えええっ!!?」
その声はももにやたらに似ている声だったのだ。いや、ももの声だった。
猫の鳴き声は、同じに聞こえるようで違うのだ。この三毛猫は、ももにはあったこともないはずなのに、的確にももの声をしていたのだ。

三毛猫がカエルの鳴き声をしていないっ!!?
いや、ふつーはそうだけど、ふつーはっ!!? ちょっと頭が混乱した。
優雅な動き、ももの動きをしながら、私と弟ももとへやってきて、三毛猫は鳴く。
「にゃあああんっ!」
ちょっと怒ったような、いや実は結構怒っている?そんな時のものの声とまったく同じ声だった。

(このミケちゃん、さっきまでのミケちゃんと違う…)

「あのさ、ねーちゃん…。俺、この猫、さっきまでと違うと思うんだけど…」
弟がそんなことをいうと、三毛猫は目を細めた。
まるで、”わかっているじゃない”というように…。
「奇遇だな。私もそう思うんだ。希望的観測でそう思いたいのかもしれないが、なんかね、ももちゃんぽく、見えるんだよ…」
「にゃああん」

さっきまでの、にゃごにゃごいっていた声じゃない…。
返事をするように、三毛猫は鳴いた。

「ももっ!?」
「にゃあん」
三毛猫は答える。ちょっと低い澄んだももの声だ。
「そうか、会いに来てくれたんだね」
私は三毛猫を恐る恐る撫でた。ももに撫でるみたいに、いつものように…。
「にゃおん」
三毛猫は返事をした。”そうだよ”というように、そして激しくすりすりを返す。
「…。もも、お前は私が泣いてばっかだから、怒りに来たのか…???」
「にゃあ」
そうだよといわんげに、三毛猫はすりすりとして、ごろごろと喉を鳴らす。
「無茶いうな、私はももが死んで哀しくて仕方ないよ。何で生きているのかって不思議だぞ」
私は私でしょうもないことをいう。
「うにゃあ…」
まるで、すまないといわんげな声だった。
「生き返ってまた、うち来てよ、ジャージー牛乳だって用意してやるから」
「にゃあん!」
三毛猫は答える。
「モンプチだって、カニカマだって、甘酒だって、ねーちゃんは用意してくれるぞ。猫バカだし」
と、弟も言う。で、訂正をする。
「いや、ももバカだし」
「にゃあ~」
まるで、何かわかっているかのように猫はいう。何気にひどいがその通りである。

”生き返るから、まってなさい…”

頭の中に声(らしきもの)が響いた。

”しばらく、おとなしくまってなさい…”

ももの声か? いや、ももの声だ。きっとそうだ。

「待っているぞ、もも…ちゃんど生き返って戻ってこい。あ、猫又でもいいけど…ももなら可愛い猫又だ…」
「おいおい、ねーちゃん」
弟がツッコミを入れる。三毛猫は驚いたように私を見る。
「いや、うちのももだよ?仮に猫又になったとしても、可愛い猫又だ。家族思いなすてきな猫又だよ。ももが猫又になるんだったら、腹の肉くれてやる。脂肪分たっぷりだぞ」
「おいおい」
そんな様子を三毛猫は見る。なんか呆れたように…である。
「いや、ももにだったら、あげれるもんだったら何だってあげるよ。何もしてやれなかったんだから、私は…。もっといっぱいなんかしてあげたかったんだから…」
それを聞くと、三毛猫は一生懸命すりすりと頭をこすりつける。なんともいえない表情だった。
そして、にゃーんという…。
「ももが、いなくなっちゃって誰もがみんな哀しいんだ。ももがやってきたら、うちの家族は勿論だけど、ENDOWさんだって、ISIKAWA家だって、みんな喜ぶよ。だって、みんなももが好きなんだから、大好きなんだから」
いって、泣きそうになる。

”なかないの…。もうしばらくまってなさい…”

また声が聞こえた気がした…。

「ももが憑依しているのか???」
三毛猫は目を細めて、なんか笑っているようにも見える…?
「おつかれさまです」
私の口からでてきた言葉はそんなものだった。何を言えばよかったのだ?
やれやれといいたげに、三毛猫は更に頭もぐりぐりすりすり、私の足にこすりつける。
私の風呂上がりの時にももがやる行動と同じ感じだ。機嫌がいい時にもやってくれた。

「お前は、なんとかやるから心配するなって伝えたくて、来たんだな…」
弟がそういうと三毛猫は
「にゃあ」
と鳴く。なんか泣きそうになる。
死んだのは私ではなく、ももなのに…。ももは心配して、あの世から、ちょっとこの三毛猫を使って、私達に思いを伝えているのか…。

「ちゃんと、まっているからな…。とっとと戻ってこい。あ、でも手続きとかちゃんと処理で着てほとぼりがさめたらかな? 慌ててやった行動はあぶなっかしいからな…」
「て、手続きって…」
弟がツッコミを入れた。
「あ、だから、なるべくはやく戻ってきなさい。でも、無理はしなくていいから…かな」
「おいおい」
「にゃああん!」
わかってますといわんげな三毛猫だった。本当にももがそこにいるかのように動くのだ。
「ももだなあ…」
弟は言う。
「ももでしょう…」
「だな…」
「にゃあ」

なんだか謎でしかない会話の羅列にしか見えないかもしれないが、確かにそこに、ももはいた。
そんな気がした。思い込みなのかもしれなという可能性は否定できないが、理屈にあわなかろうが、理論的にも理性的にもおかしかろうが、そういうことにした。

「んにゃ~ん」
と三毛猫が、ところで…とでもいいたげな顔で私を見る。

その視線の先には、もものためのお供えの猫エサがあった…。

「えっと~、これお供えなんだけど…、ももの…」
「にゃあ」
知っているといわんばかりに、三毛猫はももみたいに答える。
じ~とこちらを見て、うるるっときらきらとした目をこちらに見せる。

(ももの目だ…)
このしたたかで逆らえない、私の弱点を完全に把握したももの目だった…。
ももの目にしか見えなかった…。

「せっかく会いに来てくれたんだものな…。憑依されている三毛猫ちゃんもお腹すくだろうしな…。でも、もも、お前が食べたことになるのか…???」
ツッコミいれつつ、三毛猫を見ると、三毛猫は私に思いっきり体当たりみたいなスリスリをした。

(もも、やっぱりお前は”もも”だなあ…。)

「よ~し、ここまでやられたら、やらないわけにはいかないでしょ」
ももちゃんが、わりかし好きだったドライフードをあげた。

「もも、ごめんなさい。次回にもちゃんとお供えもってくるからっ!」
そして、飾ったももの写真に、とにかくそんな報告をした。ももの写真は、少し笑っているようにも見える。

三毛猫は生前のもものように、優雅だが旺盛な食欲を見せて、食べ始めた。
本当に不思議なくらい、ももが食べているようにしか見えないのだ…。大丈夫か、私と少し思う。でも、そうなのだ。そこには”もも”がいた。そうにしか見えなかった。

弟も私もその様子を見ていた…。見ずにはいられない。

「ももみたいだよなあ…」
「うん…」
そういわずにはいられなかった。ももは気を利かしてやってきてくれたんだ…。
そう思わずにはいられなかった……。
まるで、私は大丈夫だよ…そんなことをいいたげにも見えた。

「ももお…」

ももは、哀しくてしょうがない私と弟の前に、三毛猫を通して現れてくれたんんじゃないか…。
そう思えて仕方がなかった…。
御飯をなんともいえない顔で食べるももの顔に、その三毛猫の顔は驚くほど似て見えた。
もう、なんだか涙が出てきそうで、まずいなあと思う。

そして、あっというまに食事を三毛猫は終えると、私の足元を体当たりするように、それでも、よしよしといわんばかりに、強く優しくぐりぐりした。
本当にももみたいだ…。 ももは何気に愛情表現がツンデレではあるけれど、可愛くて仕方がないのだ。そのももの動きに、今の三毛猫はなっていた。

「泣かせるなあ…」
もうなんていったらいいのかわからなかった。
”よしよし”
そういいたげに、三毛猫はもものように、ぐりぐりすりすりを繰り返す…。

「…。なんとか立ち直るから…」
もう泣かないとはいえない。もうくじけないなんて、強い事は言えない。
それでも、立ち上がる気力は失ってはいなかった…。そんなことを思い知る。

しばらく、私と弟は三毛猫をなでなでしていた。まるで、ももをなでなでするみたいに…。

やがて、すうーっとももの気配がすっと三毛猫の中から消えていった気がした…。
それでも、ももの気配?それはどこかにするのが不思議な感じだった。


「そろそろいくか…」
弟がごくごく自然に告げた。
「そうだね…」
私はそう答える。そして、また、三毛猫を撫でて、車に戻っていく…。
三毛猫は私達を見送ってくれた…。私は何回か振り向いて三毛猫に手を振った…。


ーーー 車の中で -------

「俺さあ、あのお寺にはももはいない気がする……」
弟が言う。
「ももは、自分以外の猫が嫌いだから、なんていうか、結局家に戻ってる気がする…」
「お前もそう思う?」
「だって、ももだからさ」
「確かに、ももだものな…」
「確かに、お寺に御骨はあるけど、気配というか、魂というかそういうのは、なんか一緒にいてくれている気がするんだ… ここが、私の場所なのって言っている気がする…」
私は思ったことをいった。
「だよなあ…」
「なんか、この車の中に一緒にいる気もするんだ…」
「あーいう、あんなにわしゃわしゃいろんな動物がいるから、ももとしては居たくない気がする…。おいおい置いていくなよって…」
弟のいう事は、もっともな気がした。というか、もっともすぎるともいえる。

車の後ろの座席は私が座っているけれど、なんだかももの気配がして、私の隣の席でちょこんと座っているような気がした。前の席が運転席で弟もいるから、そこにいる感じがするのだ。
ももは、私と弟がいると、どちらにも接していたいせいか、ちょうどその真ん中
アタリに来ていることが多かった。
だから、運転席の後ろで、私の横の席に、座っている…。そんな気がしてならない。

姿は見えないだけで、それでもももはいてくれている…。
そんな事でも考えなきゃ、おかしくなりそうだが、そもそも気配はやさしく存在している。
不思議といえば不思議だ…。

「じゃあ、もも、おうちに帰るぞ…」
弟は言う。
「みんなで、おうちに帰るぞ、もも」
私も言う。

(にゃあーん)
ももは、そう答えてくれている気がした。そうして、私達は家に帰ったのだった…。

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