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        ここは“にゃんこのしっぽっぽ-猫的徒然話”です。 ここでは猫好きな管理人の趣味大爆走で御送りする、 ねこねこしたブログになっていくでしょう。 ちなみに、やはり愛猫ももちゃんが出現する率は高いです。
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ささら 由羅
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女性
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創作とか♪多趣味。
自己紹介:
どうも、ささら由羅と申します。COOLな猫好きな人間です。(まわりの人間いわく猫狂い、猫キチガイ)。
愛猫は、ももと申します。可愛らしく、そしてナカナカ気のつよ~い女の子でございます。どうぞ、よろしくお願いします。
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お寺で三毛猫が見守っている

更新は随分お休みしてましたが、何かしら猫な事を書いていきたいと思います。

そしてまた、我が家で、新しい猫を向かい入れた時には、その猫の紹介とともにまた、このブログに、猫の事を書いていきたいと考えるようになりました。

そんなわけで、そろそろゆるゆるとだけれど、ブログも再スタートすることにしました♪
いろいろ考えることはあるけれど、なんていいますか、”猫がやってくる”そんな気がするのです。
これをなんと説明したらいいのか、わからないので、こんなかたちでしか表現はできません。

どうにも曖昧な表現で謎でしかないような言葉だなとは、我ながら思います。

まあ、そんなものですが、とにかくブログはやっていこうと思います。
しばらくは、何かしらの猫の話が続きます。


--------------------------     ---------------------      ------------------------

我が家の愛猫ももがあの世に旅立って、もう1年近くたちます。
やはり寂しくて、哀しくて、時が多少癒してくれるとはいえ、そういえるものではありません。

そんな私たち家族をさりげなく見守ってくれている猫がいます。
この猫は、ももの御骨が納められているお寺に住んでいる猫です。
どうも長い間、この御寺に住んでいる地域猫のようです。




三毛猫です。このブログにも文章で出てきたことがあります。
そこで、カエルの声で鳴いた不思議な猫です。
ちなみに、あの時以降、もうカエルの鳴き声で鳴くことはなく、通常の猫の鳴き声で鳴くようになりました。
(参照 カエルの声で猫は鳴く,ももとの最後の思い出ー回想記)




恰幅のいい愛想ののいい、可愛らしい子です。
ちなみに、名前はいっぱいあります。
このお寺にお墓参り(位牌参り)にくる人々によっていろいろな名前で呼ばれています。
ミケ、ミー、ミン、たま、にゃお…etc…
どれが正式名称なのかはわかりません。



非常に渋く愛らしい猫です。お寺に行くと出迎えてくれます。
お墓参り(位牌まいり)をする人間達を見守ってくれているかのように、位牌堂に付き添って?
くれる猫です。

 

いったいいつ頃からいるのかはわからないのですが、結構長い間、ここのお寺に滞在しているようです。天国へいく動物の御霊を見送るがごとく滞在し、お墓参りをする人々を癒してくれている猫のようです。おそらく、この猫にお世話になった人たちは多いでしょう…。
ついでに、お参りをする人から貰うエサで、しっかりと肉がついたとの噂です。
たしかに、ふっくりとしてふくふくしい感じはいたします。



最近姿が見えないと思ったら、どうも飼い猫になり、去っていったようです。
詳しいことはわからないので、なんともいえませんが、幸せに暮らしているといいなと思います。この子は来る人に元気を与え癒してくれた猫でした。
今度は幸せになって、愛情たっぷりもらって暮らしてねと思います。

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カエルの声で猫は鳴く

ももの御葬式から数日後のことである…。(これも、若干回想記になります)

ももの葬式が終わって、数日が経った。
ももがいるのが当たり前の生活だったから、どうにもももがいないのが落ち着かない。
えらく、寂しいのだ。もう酷く空虚だ。自分の中に大きな穴ができたようだなんて、そんな甘いものではない。その穴は巨大すぎて自分を潰してしまいそうなものなのだ。
穴が大きすぎて、自分が消えていく。そんな感じだ…。

ももちゃんは死んでここにはいないはずなのに、気配(!?)はするのだ。
感触(!?)もどこかする…。
どこにいるのだ、ももちゃん……?

そんな、休日だった。弟も今日は家でゆっくりしている。弟も休日だ…。

「おーい、ももちゃんのお参りいかないか? 納骨堂に収められる前に行こうと思うんだ」
私はこんな言葉を弟にかけた。
が弟は、ももちゃんの位牌の位置等細かい情報は知らない。そのため、私がご案内することにした。で、弟は言う。
「俺、ももちゃんの火葬の日行けなかったから、行くよ。罪悪感があったんだ」
そんなわけで、準備をして、お寺に行くことになった…。


いろいろ準備してから、車にのって、兄弟二人でお寺に向かう。
「そういや、ももの火葬をした日に、奇妙な猫がいたんだ…」
そんなことを話し始めた。
「ふ~ん?」
「げこげこって、カエルのように鳴く恰幅のいい三毛猫なんだけどね」
「へっ!?」
弟はちょっと吃驚したようだった。
「カエルの鳴き声をした猫だ。わたしゃ、はじめて見たよ…」
未だに思いだすと不思議な猫である。
「ふつ~、猫はげこげことは鳴かないぞ…」
「うん。でも、鳴くんだ…。たまたまなのか、なんなのか…」
そのままのことをいうしかない。
「なんていうか…」
弟はなんともいえないようだった。
「坊さんが絶叫するのも凄いけど、それもまた…」
弟には先日、葬式の様子を聞かせたのだ。もっとも、三毛猫のことは変った猫がいたというぐらいで詳しくはしゃべらなかったのだが…。
「なんか、ももが何やら訴えたかったんだなと…」
「生き返る気満々だな…」
弟は言う。
「望むところだ」
私はそう答える。
「蘇るってことで、カエルなんだな…。ももはダジャレの好きな猫なんだな…」
弟はそんなことをいう。
「ももだからな…」
結局そういう私である。
「ももは一生懸命伝えようとしたのかもしれないな…」
だとしたら、なんとももはやさしい猫なのだろう…。

「いいから、私のいうことを聞きなさいっ!!!っていって、その三毛猫に憑依したのかもな。いや、ももの事だから威嚇したのかもしれない…」
弟はふと考えていった。
ありえる…。ももは自分以外の猫が嫌いな激しい喧嘩っ早い猫でもある…。
「た、確かに…」
「ちなみに、そのあと私は、どうもとりつかれたのかもしれない…。私は何も口を動かそうとしてもないのに勝手に口が動いて、”蘇るだからカエルなんだ”っていうんだ」
「……」
「こうして、話すと我ながら危ない気もするんだが、私は声を出しているつもり、意識は無いのに勝手に口が動くんだ。なんか、変な感じだった…。なんかふんわりしててう~ん…」
あの時の感覚を表現しようとしても、本当になんとも表現しづらかった。
「なんかね、ももちゃんは生き返ってくれるんだって思えて、泣けてきた…」
「生き返る気満々だな…」
「ぜひとも帰ってこいだよ…」
思いうかぶももは、哀しいほど優しく可愛い…。
ももはやはり可愛いのだ。たとえ死んだとしても、この世にはもうその姿はないとしても。
酷く儚い白い物体になったとしても。


寺についた…。駐車場に車を止めて、位牌堂に兄弟二人で向かって言った…。

三毛猫はいた。
私と弟の姿を見ると、すぐさまとととっと恰幅のいい体をかるく揺らして、出迎える様にやってきた。

「おお、お出迎えしてくれたんだね。ありがとう…」
と私がいうと、三毛猫はふっと目を細めてこちらを見た。
「にゃごにゃご…」
三毛猫はそう鳴いて、ごろごろと喉を鳴らした。

「おー、今日は、この前より鳴き声が猫みたいになってる」
私がいうと弟は、
「へっ?」
という。
「ああ、このこが先ほど言っていた三毛猫ちゃん。ももが火葬された日、げこげこいって慰めてくれた優しい子なんだ」
「う、うん…。しかし、猫に鳴き声が猫みたいになっているって…、凄い表現だな…」
たしかに弟の言うとおりである。
「しょうがないでしょ。げこげこ鳴くのだから。流石に想定外だ」
「まあ、猫はげこげことは鳴かないよな…」
「…。ももちゃんは、以前、君が『わんと鳴け』といったら、頑張って『にゃん』って鳴いてくれたっけ…。あれは可愛かったな。ももちゃんはももちゃんなりに、頑張ってくれたんだな…。
う~んちょっと難しいなって顔したのも可愛かったな…」
かつてのももを思い出す。ごくごく自然に。
「あれは凄かったし、問答無用で可愛かったな…」
「なんでそういう展開になったのかは覚えてないけど、あれは衝撃的だったなあ…」
思いだすと愛しく切ないものだ…。
「そんな、可愛い猫なのに、今じゃコンパクトサイズの御骨だからな…」
哀しいったらありゃしない…。黄昏もする…。



位牌堂にて…。
仏像のもとに大小6個ぐらいの骨壺があって、そこの左の方にももの御骨はある…。

「ももはこれだよ。これがももの御骨だ」
生き物ではなく物体となってしまったももが悲しい。
もう猫ではなく、そんなに大きくはない骨壺に入った御骨なのだ。
「……。本当に御骨になっちゃったんだな、もも…」
弟はいう。本当にそうだ。こんな姿のももになってしまったのだ。

そんな私達を三毛猫はちょっと離れていたところで、見守っていた…。



「ももは喜んでいるよ。お前が来てくれて…」
「そうかあ? もも、ごめんな。火葬いけなくて…」
弟はそういう。
そんな、弟をももは、近くで見ているような気がした。
「絶対喜んでいる。絶対。 何故なら、ももだもの…。ももちゃんはお前の事大好きだからな」
「そうなのかなあ…。だとしら、ねーちゃんの事も大好きだから喜んでいるよ」
泣かせることをいう奴である。
「…。しょうがねえ奴だなあと呆れているかもな…」
そんな気もした。けれども、ちょっとあきれたように、それでもよしよしと寄り添ってくれるももはいない。それが物凄く愛しく哀しい…。
「そりゃねえだろ、いくらなんでも…。でも、なんか心配して、足元に来ていそうな気もする」
「だねえ。ある意味、ももちゃんは保護者だったからなあ…。お姉ちゃんというか…、母親というか、父親というか…」
「いっちゃなんだけど、うちの一家はみんな、ももにとっては、ももの子供だったのかもしれない。いや、孫か?」
何気に容赦のない弟である。
が、否定はできない…。
「うーん、ももが親分で、うちらが子分という図も成立するような…」
と私。そういや、いつのころから、甘えん坊だけれど、しっかりと親玉になっていたのだろう?
「まあ、ももだからなあ…。ももは若く見えても19歳だし…」
「人間御年齢に換算したら90歳だからねえ、ばーさんと同じになる」
そういって、再び、自分たちの実の祖母を思い出す。
祖母は90歳の時に亡くなったのだ。これからは、ももを思い出すたび祖母もセットで思い浮びそうである。

「逞しいばーさんだったんだな、ももは」
「ばーさんといってもばーさんじゃない気がする。老猫のはずだけど見かけは綺麗で体力あったし、猫パンチはまるで戦闘兵のような状態だったしね、年取っているようにはとても見えない…。まあ、最近ちょっと疲れたなって顔するときもあったけど、そこらへんかけまわっているし、とても”死ぬ”なんて思えなかったしね…」
「老いることを拒否した猫か…」
「本当にそうだよ…」
「だなあ…」
「まあ、19歳だから年はとっていたのは確かだけど、弱り切った姿なんか見せないであの世にいっちゃったんだから、なんとも凄いよ…弱ってもいいからずっと生きててほしかったけどね…」
「それは、ももちゃん嫌だったんじゃないか?」
「うん、わかっているよ。それでも思うのよ…。恐らく段々弱っていきながら死んだら、酷いなあて嘆くのだろうよ…。それでもそう思うのさ。我ながらバカだと思うよ」
溜息が出てくる。
「なんていうか、救いはももの死に顔がまるっきりいつもみたいに、ぐーぐー昼寝しているように穏やかだったことだ…。気が抜けるというか…。悲しいけれどなんか救われた気がする…」
「あれは本当にただ寝ているみたいだものな…」
「なんかの間違いでも正解でも、起き上がるんじゃないかと思ったけど、結局死んだままだった…。でも、本人だって死にたくはなかったと思うよ。でなきゃ、急須のありえないところが割れて、坊さんが絶叫なんてありはしない気がする…」
「生きていたかったんだよ!っていうももの思いか…」
「坊さんはとんだトバッチリだったかもしれないが、それはごめんなさいというしかない」
ももの骨壺をみながら、そんなことを思い出す。(※参照回想記9)

冥福を祈り、御線香をあげる…。
せめて、やすらかに天国へいきますように、虹の橋にいきますように…。
もっとも、ももの事だから早々と、私のいる場所はここじゃないっ!と二足歩行で、ダッシュで走りながら、この世に舞い戻ろうとしそうな気もする。
でもって、まわりの他の猫達が、ぼーぜんと見守っているか、唖然としているか…。

まあ、私がそれを望んでいるのだろうけど。そんな想像をしてしまう…。
ありえそうな気が思いっきりする……。思いっきり…。

もってきた写真を飾り、お供えのキャットフードも飾った。ももの大好きだったものだ。
こんなことになるのなら、もっとたくさん食べさせてあげればよかった…。
本当に後悔しかない…。

(ごめんね、もも、不甲斐ない飼い主で……)

「にゃーん…」
(え、ちょっと待て…???)
ももの感触???がした。
(ええっ!??)
慌てて、見たものの、それは当然ももじゃない。私達を見守っていた三毛猫だった。

「にゃあーん」
「えええっ!!?」
その声はももにやたらに似ている声だったのだ。いや、ももの声だった。
猫の鳴き声は、同じに聞こえるようで違うのだ。この三毛猫は、ももにはあったこともないはずなのに、的確にももの声をしていたのだ。

三毛猫がカエルの鳴き声をしていないっ!!?
いや、ふつーはそうだけど、ふつーはっ!!? ちょっと頭が混乱した。
優雅な動き、ももの動きをしながら、私と弟ももとへやってきて、三毛猫は鳴く。
「にゃあああんっ!」
ちょっと怒ったような、いや実は結構怒っている?そんな時のものの声とまったく同じ声だった。

(このミケちゃん、さっきまでのミケちゃんと違う…)

「あのさ、ねーちゃん…。俺、この猫、さっきまでと違うと思うんだけど…」
弟がそんなことをいうと、三毛猫は目を細めた。
まるで、”わかっているじゃない”というように…。
「奇遇だな。私もそう思うんだ。希望的観測でそう思いたいのかもしれないが、なんかね、ももちゃんぽく、見えるんだよ…」
「にゃああん」

さっきまでの、にゃごにゃごいっていた声じゃない…。
返事をするように、三毛猫は鳴いた。

「ももっ!?」
「にゃあん」
三毛猫は答える。ちょっと低い澄んだももの声だ。
「そうか、会いに来てくれたんだね」
私は三毛猫を恐る恐る撫でた。ももに撫でるみたいに、いつものように…。
「にゃおん」
三毛猫は返事をした。”そうだよ”というように、そして激しくすりすりを返す。
「…。もも、お前は私が泣いてばっかだから、怒りに来たのか…???」
「にゃあ」
そうだよといわんげに、三毛猫はすりすりとして、ごろごろと喉を鳴らす。
「無茶いうな、私はももが死んで哀しくて仕方ないよ。何で生きているのかって不思議だぞ」
私は私でしょうもないことをいう。
「うにゃあ…」
まるで、すまないといわんげな声だった。
「生き返ってまた、うち来てよ、ジャージー牛乳だって用意してやるから」
「にゃあん!」
三毛猫は答える。
「モンプチだって、カニカマだって、甘酒だって、ねーちゃんは用意してくれるぞ。猫バカだし」
と、弟も言う。で、訂正をする。
「いや、ももバカだし」
「にゃあ~」
まるで、何かわかっているかのように猫はいう。何気にひどいがその通りである。

”生き返るから、まってなさい…”

頭の中に声(らしきもの)が響いた。

”しばらく、おとなしくまってなさい…”

ももの声か? いや、ももの声だ。きっとそうだ。

「待っているぞ、もも…ちゃんど生き返って戻ってこい。あ、猫又でもいいけど…ももなら可愛い猫又だ…」
「おいおい、ねーちゃん」
弟がツッコミを入れる。三毛猫は驚いたように私を見る。
「いや、うちのももだよ?仮に猫又になったとしても、可愛い猫又だ。家族思いなすてきな猫又だよ。ももが猫又になるんだったら、腹の肉くれてやる。脂肪分たっぷりだぞ」
「おいおい」
そんな様子を三毛猫は見る。なんか呆れたように…である。
「いや、ももにだったら、あげれるもんだったら何だってあげるよ。何もしてやれなかったんだから、私は…。もっといっぱいなんかしてあげたかったんだから…」
それを聞くと、三毛猫は一生懸命すりすりと頭をこすりつける。なんともいえない表情だった。
そして、にゃーんという…。
「ももが、いなくなっちゃって誰もがみんな哀しいんだ。ももがやってきたら、うちの家族は勿論だけど、ENDOWさんだって、ISIKAWA家だって、みんな喜ぶよ。だって、みんなももが好きなんだから、大好きなんだから」
いって、泣きそうになる。

”なかないの…。もうしばらくまってなさい…”

また声が聞こえた気がした…。

「ももが憑依しているのか???」
三毛猫は目を細めて、なんか笑っているようにも見える…?
「おつかれさまです」
私の口からでてきた言葉はそんなものだった。何を言えばよかったのだ?
やれやれといいたげに、三毛猫は更に頭もぐりぐりすりすり、私の足にこすりつける。
私の風呂上がりの時にももがやる行動と同じ感じだ。機嫌がいい時にもやってくれた。

「お前は、なんとかやるから心配するなって伝えたくて、来たんだな…」
弟がそういうと三毛猫は
「にゃあ」
と鳴く。なんか泣きそうになる。
死んだのは私ではなく、ももなのに…。ももは心配して、あの世から、ちょっとこの三毛猫を使って、私達に思いを伝えているのか…。

「ちゃんと、まっているからな…。とっとと戻ってこい。あ、でも手続きとかちゃんと処理で着てほとぼりがさめたらかな? 慌ててやった行動はあぶなっかしいからな…」
「て、手続きって…」
弟がツッコミを入れた。
「あ、だから、なるべくはやく戻ってきなさい。でも、無理はしなくていいから…かな」
「おいおい」
「にゃああん!」
わかってますといわんげな三毛猫だった。本当にももがそこにいるかのように動くのだ。
「ももだなあ…」
弟は言う。
「ももでしょう…」
「だな…」
「にゃあ」

なんだか謎でしかない会話の羅列にしか見えないかもしれないが、確かにそこに、ももはいた。
そんな気がした。思い込みなのかもしれなという可能性は否定できないが、理屈にあわなかろうが、理論的にも理性的にもおかしかろうが、そういうことにした。

「んにゃ~ん」
と三毛猫が、ところで…とでもいいたげな顔で私を見る。

その視線の先には、もものためのお供えの猫エサがあった…。

「えっと~、これお供えなんだけど…、ももの…」
「にゃあ」
知っているといわんばかりに、三毛猫はももみたいに答える。
じ~とこちらを見て、うるるっときらきらとした目をこちらに見せる。

(ももの目だ…)
このしたたかで逆らえない、私の弱点を完全に把握したももの目だった…。
ももの目にしか見えなかった…。

「せっかく会いに来てくれたんだものな…。憑依されている三毛猫ちゃんもお腹すくだろうしな…。でも、もも、お前が食べたことになるのか…???」
ツッコミいれつつ、三毛猫を見ると、三毛猫は私に思いっきり体当たりみたいなスリスリをした。

(もも、やっぱりお前は”もも”だなあ…。)

「よ~し、ここまでやられたら、やらないわけにはいかないでしょ」
ももちゃんが、わりかし好きだったドライフードをあげた。

「もも、ごめんなさい。次回にもちゃんとお供えもってくるからっ!」
そして、飾ったももの写真に、とにかくそんな報告をした。ももの写真は、少し笑っているようにも見える。

三毛猫は生前のもものように、優雅だが旺盛な食欲を見せて、食べ始めた。
本当に不思議なくらい、ももが食べているようにしか見えないのだ…。大丈夫か、私と少し思う。でも、そうなのだ。そこには”もも”がいた。そうにしか見えなかった。

弟も私もその様子を見ていた…。見ずにはいられない。

「ももみたいだよなあ…」
「うん…」
そういわずにはいられなかった。ももは気を利かしてやってきてくれたんだ…。
そう思わずにはいられなかった……。
まるで、私は大丈夫だよ…そんなことをいいたげにも見えた。

「ももお…」

ももは、哀しくてしょうがない私と弟の前に、三毛猫を通して現れてくれたんんじゃないか…。
そう思えて仕方がなかった…。
御飯をなんともいえない顔で食べるももの顔に、その三毛猫の顔は驚くほど似て見えた。
もう、なんだか涙が出てきそうで、まずいなあと思う。

そして、あっというまに食事を三毛猫は終えると、私の足元を体当たりするように、それでも、よしよしといわんばかりに、強く優しくぐりぐりした。
本当にももみたいだ…。 ももは何気に愛情表現がツンデレではあるけれど、可愛くて仕方がないのだ。そのももの動きに、今の三毛猫はなっていた。

「泣かせるなあ…」
もうなんていったらいいのかわからなかった。
”よしよし”
そういいたげに、三毛猫はもものように、ぐりぐりすりすりを繰り返す…。

「…。なんとか立ち直るから…」
もう泣かないとはいえない。もうくじけないなんて、強い事は言えない。
それでも、立ち上がる気力は失ってはいなかった…。そんなことを思い知る。

しばらく、私と弟は三毛猫をなでなでしていた。まるで、ももをなでなでするみたいに…。

やがて、すうーっとももの気配がすっと三毛猫の中から消えていった気がした…。
それでも、ももの気配?それはどこかにするのが不思議な感じだった。


「そろそろいくか…」
弟がごくごく自然に告げた。
「そうだね…」
私はそう答える。そして、また、三毛猫を撫でて、車に戻っていく…。
三毛猫は私達を見送ってくれた…。私は何回か振り向いて三毛猫に手を振った…。


ーーー 車の中で -------

「俺さあ、あのお寺にはももはいない気がする……」
弟が言う。
「ももは、自分以外の猫が嫌いだから、なんていうか、結局家に戻ってる気がする…」
「お前もそう思う?」
「だって、ももだからさ」
「確かに、ももだものな…」
「確かに、お寺に御骨はあるけど、気配というか、魂というかそういうのは、なんか一緒にいてくれている気がするんだ… ここが、私の場所なのって言っている気がする…」
私は思ったことをいった。
「だよなあ…」
「なんか、この車の中に一緒にいる気もするんだ…」
「あーいう、あんなにわしゃわしゃいろんな動物がいるから、ももとしては居たくない気がする…。おいおい置いていくなよって…」
弟のいう事は、もっともな気がした。というか、もっともすぎるともいえる。

車の後ろの座席は私が座っているけれど、なんだかももの気配がして、私の隣の席でちょこんと座っているような気がした。前の席が運転席で弟もいるから、そこにいる感じがするのだ。
ももは、私と弟がいると、どちらにも接していたいせいか、ちょうどその真ん中
アタリに来ていることが多かった。
だから、運転席の後ろで、私の横の席に、座っている…。そんな気がしてならない。

姿は見えないだけで、それでもももはいてくれている…。
そんな事でも考えなきゃ、おかしくなりそうだが、そもそも気配はやさしく存在している。
不思議といえば不思議だ…。

「じゃあ、もも、おうちに帰るぞ…」
弟は言う。
「みんなで、おうちに帰るぞ、もも」
私も言う。

(にゃあーん)
ももは、そう答えてくれている気がした。そうして、私達は家に帰ったのだった…。

拍手[1回]

ももとの最後の思い出ー回想記13

続きます。

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11月30日 いつか、そちらにいくとして…

慰霊堂から出てみると、先ほどカエルの鳴き声をした三毛猫が待っていた…。どうやら、少々近くで見守っていてくれもしたようだ…。

ごろごろごろ…

三毛猫は、そう喉を鳴らして、よしよしといわんげに私の足にすり寄ってきた…。
私はしゃがみこんで、三毛猫をなでた…。涙はもう出なかったけど、哀しかった…。

哀しい、哀しい、哀しい……。

そんな私の思いがわかるのか、ただただ三毛猫は私の手にスリスリをしてくる…。
ごろごろなる喉の音が優しくて切ない…。

もう、ももは喉を鳴らして甘えてこない…。
もう、ももはすりすりもしてこない……。
もう、ももは………。

「ありがとうね…。慰めてくれてるんだね…」
「げこげこ…」
また、カエルのような鳴き方を三毛猫はする。

(かえるかあ… 未来にはももは帰ってくるのだろうか…?)

なんかそんなことが思い浮ぶ。荒唐無稽だ。けれどもあり得るような気がした。

先ほどあった私の口を何者かにのっとられた不思議な体験といい、三毛猫のげこげこといいなんだか、あり得そうな気はなんだかした。
ふわっとした、なんともいえないものだ。それでも確かにそんな風に思うのだ…。
哀しみと虚無で私は壊れてしまっているからなのかもしれない…。
そうとも思えた…。

「お前はここの御寺の猫さんなのかな…。うちの猫のももは、さっき御骨になっちゃったんだ…」
そういうと三毛猫はちょっと目を細めた。
「もし、魂のももちゃんと会うことがあったら、仲良くしてあげてね…」
なんだか、猫なら、猫の魂も見えてしまえるように思えた。
うちのももちゃんは猫嫌いの人間好きだから、大変かもしれないとふと思う。
「あはは、バカだね、私は…。いくら猫でも猫の魂は見れないか…」
どこか狂ったように笑うしか私はできない。

「げごげご…」
ごろごろごろ…
三毛猫の音は、まるで私に何かを伝える様に響いてた。

「寂しいんだ、哀しいんだ、虚無なんだ…」
力なく私の手は三毛猫をなでる。ももとは違う感触だ。それでも猫の感触だ。
元気いっぱいな、血色いいような健康的な障り心地だ……。


「もっと、いっぱいなでなでしてやればよかった…」

亡くなる30分前、もっといっぱい、たんまりナデナデをしたら、ももは死なずにすんだのだろうか…? あの時は、ほんのちょっとしか撫でてやってなかった。
だから、ももはがっかりしたのかな……。
ありえそうな気が気もしてきた……。
もっとたんまりと、しっかりとももちゃんを撫でてやるべきだった…
あの時の穏やかな顔は、いつもの顔に見えたけど、本当は、ももはサヨナラといっていたのかな…。だとしても、私はわからなかった…。

(ごめんね、ももちゃん…。不甲斐ない飼い主で…)

後悔はどんどん湧いてくる……。どんどんわいてくる…。

(ごめんね、ももちゃん…)

私はそう思うことぐらいしかできない……。

「この猫ちゃん、カエルみたいに鳴くんですよ」
と見れば、何故かお参り客の人になんか母は言っているようだ。が、それが割と近い位置なのにえらく遠くに見えた。本当に偉く遠くの事に見えた。

この触っている三毛猫がただただ現実だった。

「やっぱり猫はやさしいね……」
思いだすのはももの事だけだった。
優しくて私の友人であり、私の兄弟であり、私の家族であり、私の…etc…

もうこの世にはいない、愛しの存在……。

何故私を置いていった…? 何故私も連れて行かなかった…?
そう思う。けれども勝手な話だが、
私は生きなきゃと思う。私はももの魂を安らかに送って、また迎えてやらないとと思う。
正気も狂気も私の中でただただ、目まぐるしく荒れていった…。

ももがいない…。それが現実、嫌な現実…。それは変ることはない。

それでも、私は生きていく…。わかっているけど、その現実は酷だった。

取り残された私には何の意味があるのだろう?
未だわからない、その意味は私が、この世から消える時に嫌でもわかるのだろうか?
友人が亡くなった時もこんなことを考えていたなと思いだす。

死んでいく者たち、生きていく者たち…。
意外とそんな大差はないように見えて、それと同時に途轍もなく差があるようにも思える。

ただ、私は生きていく者だ…。あと、どれくらいだかはわからないけれど…

その時にはももよ、迎えにこい。
魂になった私は、魂になった君を思いっきりなでなでして、だきだきしてあげるから。
でも、その時には、ももは、もう別の生き方をしているのかな…。
それなら、それで一人で私はあの世に行くだけだ…。
ぐらぐらと、どうにも荒唐無稽に考える。狂ったように考える…。
死後の世界に何を期待しているというのだ、私は…。

ここに、ももはいない。私の傍にいない…。

もう、この世という次元にはいない。私とは違う世界のものになってしまった…。
それだけで、マトモな状態の精神なんて、遥か彼方にぶっとんだきがする…。

ももがいない、ももがいない、ももがいない…。
それは絶望的に悲しすぎた…。私は、自分の半分ぐらいを失ったみたいだった…。

「げごげご…」
まるで、ももの代わりをするかのように、三毛猫は私にすりすりする…。
ももは、私に元気を出してほしいときに、いろいろしてくれたなと思いだす。
こんな風にすりすりしてくれるときもあったし、ごろんと転がって、お腹をみせてなでなでを要求するときもあった。これをやられると、力がふわっと抜けるのだ。

怒りも悲しみも憎しみも、み~んな、もものふわふわの毛並みで、やわらいだものになってた。
で、ももが更にナデナデにいろいろ要求して、私がこたえていくうちに、なんだか冷静にはなっていた。ナデナデで私の心を癒していたんだなと思う。
いや、うちの家族、いや、ももの接した人達も、このもものナデナデ要求に癒されたのではないだろうか?

そんなももをどうしてあの世に連れて行くのだ……???
天に向かって、呪の言葉を吐きそうになる。吐いても何も解決しないけど。
それほど天に重要性はない。神なんて信じられない。所詮人間の幻想だ。
空は、私の言葉も無視を決め込んだかのように、曇っていた…。

まあ、そんなことどうでもいいのだ。

「おい、そろそろ帰るぞ…」
父親が告げる。どうも、何か壊れたように三毛猫を撫でる私がおかしいと思ったのだろう。
母親はすでに、用があるのだといって、とある県会議員の事務所にとっとと消えていた。
まあ、そんなことはどうでもいい。心底どうでもいい事だ。

「じゃあ、ありがとうね、げこちゃん…」
げこげことカエルのように鳴くからということで、いつのまにか勝手に、三毛猫の名前を、げこちゃんにしていた。
「げこ…」
三毛猫はそう鳴くと挨拶するみたいなスリスリをした。

私は寺の出口に向かう。三毛猫は私と父を見守るように見送るように、見ていてくれた…。
その三毛猫に手を振ると、三毛猫はやさし気にそっと目を細めた。なんだか泣けそうだった。
何度か振り向きながら、手を振って、見えなくなるまで三毛猫を見た…。
まるで、私達を見えなくなるまで見送るように、三毛猫はしてくれた。


車の中に戻って、家に帰る…。

「お前はあの猫と知り合いなのか?」
父親はわけのわからんことを聞いてきた。
「しいて言うなら、今日知り合ったんだよ…」
「まるで、お前を見送っているみたいだったな…」
「…。心配してくれたのかもしれないな…。ももの代わりに、見送ってくれたのかもしれない…」
そんなことをいいながら、ふと思う。

ももの魂は、一緒に私達に付いてきているのではないだろうか?
何というか、気配がするのだ…。
いかんせん、ももは自分以外の猫が嫌いな猫なのだ。(自分の家族とENDOWさんちのたまは除く)
”ここに私の骨はあるけど、私の家はここじゃないの”
結局のところ、魂だけはそっと私達の傍に付いてきてくれているような気がする。
”ここが私の家なんだ”
そう思って、我が家にいてくれるなら、それはありだろう。
まあ、でもとりあえず、天国にはいって、ほとぼりさめたら来てくれ、である。
死後の世界なんぞわからない私はそんなことを思うのだ。

このももの魂の延長線に、私は交わっていくのだろうか…。そんなことを考える。
荒唐無稽だ。それでも考えずにはいられない。

また、逢おうね。ももちゃん……。
それを願いながら、この絶望的な現実を悲しむ……。

「ある意味、縁はあるのかもしれないね。カエルの鳴き声をする猫だしね…」
「あれは吃驚したな…」
父親はそんなことをいう。
「また会うかもしれないな…」
ふと私はそんなことをいう。
「なんでだ?」
「墓参りするときがあるからだ…。それに、ももが納骨堂に入る前に、我が弟にも来てもらいたいしね…」
「そりゃそうか…」

ひょっとして、あの三毛猫が、私を導いて、ももに再び会わしてくれるのかもな…。

そんな途方もない事が思い浮ぶ。無茶苦茶である。
それでも、ありえそうな気はしていた。悲しみに暮れていても人間は強欲なのかもしれない。
そういうことなのかもしれないけど…。

やがて、飼い主は、途方もない虚無と絶望的な哀しみの中、夢を見る…。
ありし日の夢を見ながら、悲しみの夢を見ながら、未来に愛猫とであう夢を見る…。

今は、ただただ悲しくて、虚無で、どうしようもなくて、いるわけだ。
狂っていくように、それでも哀しみにずぶぬれながら、虚無をかんじる…。
いつ終わるかわからないし、あるいはもう終わらないことなのかもしれない。


「ももの回顧録をつくるんだろう?」

突然、父親がいう。
「へっ!?」
父よ、何を唐突にいうのだ!??
「お前は、ももへの手紙を7枚も書いたんだから、そんくらいすぐ作るだろう?」
父は真顔だった…。
「ど~いう理屈だ…。というか、またそれをいうのか?」
まるで、わからない……。
「今は、とても書ける気力がないよ…」
はっきり言ってない…。父よ、私を何だと思っているのだ???
「やはり記録には残さないとな…」
おいこら、人の話を聞いてくれ…。
「あの、ももの手紙燃やしちゃったんだしな」
まだ、いうのか???
「お前の事だから、書くんだろう?」
「決定かい!? …。まあ、書くけどね…」
「だろう?」
確かに、私は黙っていても書くだろう。いっちゃなんだが、書くだろう…。
「ただ、頭がまだ働かないよ…。時間が必要だ…」
これは事実である。揺るぎない事実である。
「すぐ、できるんじゃないのか?」
鬼のような事をいう父親である。
「すぐにできるようなものじゃないよ。まったく…しばらくは哀しみに浸らせろ…」
「情けないなあ」
おいこら、それは流石に酷いぞ
「だーっ!?だったら、とーちゃん、貴方が書け!」
「俺は文章を描くのが嫌いだ」
おいこら。キッパリいってどーするのだ。
「はあ…。なんちゅう親だ」
「お前の親だ」
いや、わかっている。確かにそうだ。

「書くよ…。まあ、少々時間はかかるだろうがね……」
「マイペースな奴だな…」
呆れたように父親は言う。本当になんていう親だ…。
「まずは、ブログだな…。そこで今日の事を書く…。多分長くなるだろうけど…。それからだ、回顧録は…」
「なんで、お前はそうデジタルなんだか…」
父親は何故か溜息をつく。
「まずはやれるところからだ。今の私にはそれしかできないよ…というか、とーちゃん自分はどうなんだよ?」
若干イライラしながら、私は答えるしかない…。

ももの魂は、そんな様子を呆れて見ていたのかもしれない…。
今では、そんなことも思えるが、当時はもうただただ、何がなんだかわからなかった…。
愛猫がなくなると人はダメになる。
それをただただ、もう続けていた。そんな気がする…。
それでも、私は意外にも正気をすべて失わず、狂気に暴走することなくいれたのかもしれない…。


その 数日後あたりに、私はブログに、ももの最期の回想記のブログを書き始めた。

そして、長々と書いてきた、かなり長く書いてきた。
今でも、哀しみは存在し、虚無も存在して、なんともいえない状態である。
それらが癒えることはないでしょう。ただ、少し冷静になり落ち着くだけの話だ。
それは、私の生きている限り続くわけである…。

まずは、ももに捧げる回想記は終わった…。
そして、ももの冥福を祈りながら、ももへの思い出を大事にしながら、時は流れていくのだ。




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ももとの最後の思い出ー回想記 終了

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ももとの最後の思い出ー回想記12

続きます。
※今回は骨についての内容が多めです。苦手な方は読むのは避けたほうが無難かと思われます。)

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11月30日 真っ白なもも

とうとうこの時が来てしまった。この時ほど、哀しく虚無な時はない…。
けれども、いつかは訪れる瞬間だ。

ももは真っ白な物体になった。ついに御骨になってしまった…。

もう、あの可愛らしくちょっと生意気で、綺麗な姿のももはいない…。
残酷なくらい、静かで白い物体になってしまった……。
真っ白で、儚い骨になってしまった……。

あんなに愛しいももの猫の形が、こうも変わり果ててしまう。可愛げもへったくれもない、
無機的な白いカルシウムの物体、これがももだというのだ。
なんて残酷な姿に、お前もなってしまったのか…。

意外にも涙はこぼれなかった。ただただ呆然として虚無だった。

こんな白い骨が、ももの体に入ってて、ももの体として機能していたんだな…。
生前の面影なんて、もう燃え尽きて、何もない……。
物言わぬ骨はただただそこに存在する……。
儚く、哀しく、寂しそうに、そこにももの御骨は存在していた。

もう触れられない… なでなでして、目を細めるももはそこにはいない…。

(私は骨になっちゃったよ… ごめんね…)
そんな感じの言葉を発しているような気もした。けれど、骨になっても、ももはももである。

(うん…)
正真正銘最後のものの姿だった。ただただ白くて儚い、ももの姿だった…。

惨いものだ……。

正直いってそう思う。私にとっては酷く残酷なものだ。

愛らしい愛しい姿、その肉体を骨を残して燃やし尽くすものなのだから。
無情に残酷に容赦なく生前の姿を消してしまう。それが、火葬というものだ。
嫌でも、死んで生き返らないことが明白になるものだ。
白い儚い姿…。それは穢れも何もない美しい姿なのかもしれない。
けれど、こんなに残酷で惨い姿があるだろうか……。

(こんな姿になってしまって…)

やはり、何度見ても悲しい物体でしかない。これほど儚く惨い物体があるのだろうか?
それでも、やはり見てしまう。
こんな姿でも、ももの最期の姿なのだから…。

ももの体は、大柄ではあったけど、スリムで綺麗な体だった。 その骨を支えていた骨は、思いのほか逞しくて、綺麗だった。
足の骨を見ていたら、切なくなってきた。

この骨があった手足で、強烈な猫パンチを炸裂していたんだな…。
この手で、私を撫でてくれたんだな…。
この手で、窓を開けて、外に飛び出していったんだな…。
この手で、冷蔵庫を開けようとしたんだな…。
この手で、甘酒の入った器をおさえて、そして、のどを潤していたんだな……。

もう、もものそんな姿は見ることはできない。
私の記録の中にはいつまでも残るだろうけれど……。

もっと生きてれば、モンプチだって開けれるようになってたかもしれないのにね…。
スマホだって、いじくれるようになったかもしれないし、
コンポだって、もっと上手に操作できるようになってたかもしれないのにね…

思えば、猫にしておくには惜しいほど手先の器用なももであった…。
学習して、挑戦していく…。そんなことをしていける利発なももであった…。

(惨いなあ…)
やはり、哀しい、哀しい、哀しい…。
19年と4カ月の歳月も、この白く儚いカルシウムになってしまった…。
この無常観は形容できない…。
なんともいえない…。

並んだ骨は、酷く哀しい…。

なんともいえない時は過ぎる。火葬だから、熱かったんだろうな…。
でも、もう暑さも寒さも何も感じないんだよ…。
もう、猫の姿さえなく骨になってしまったのだから…。

もう、抱きしめてやることも、なでなですることもできない…。
もう、スリスリされることも、寄り添って寝転がることも、膝の上で威風堂々することもない…。

ももには何もできやしない。ももは何もできやしない…。
火葬は惨いなと思う。可愛いももの姿を消してしまう残酷なものだ。
それでも、次のステップに移るための、埋葬法だ…。
なんていうか、仕方ないものだけど、これはこれで天国へいくための踏ん切りなのかもしれない。骨だけになってしまえば、もう天国にいくしかないだろうってなるのかもしれない。
もう、何もかもいらんものは燃やして消えたのだから、とっととあの世に行ってこい。
火葬はそういうものなのかもしれない。
そんなことを思った。

にしたって、酷いよ、この姿は……。

こんなももの姿なんて、見たくなかったよ。誰も見たくなかったよ…。
ずっと、ももがいてくれると思った…。

ずっと一緒に生きていく者だと思ってた。
私はももに失礼なこともいいながら、我儘なことを、どーしょもないことをかましながら、生きていくもんだと思っていた。
それでいて、どうにもこうにも、おたがいイチャイチャとしながらいくもんだと思っていた。

いや、本当に一緒にずっといたかったんだ…。

自分の情けなさを、もものせいにもして我儘だった自分を思い出す。
ももは、情けないへたれた奴だと思っていたのだろうか…。だとしたら、ごめんなさいというしかできないけれど、もうなにもしてあげることはできないけど、ただただ思い知ってツライし、キツイ…。

それでも、ももは私を可愛がってくれてたのか…。しょうがない奴だと、私をももはももで、可愛がってくれたのか…。
思考は無限ループのようにめぐりめぐる。

いつでも、ももはももであった。もも以外のものではなかった。
ただただ優しく、ツンデレだけど愛情深い、賢く逞しいももであるのだ。

そう思えるからこそ、哀しい、哀しい、哀しい…。
もう二度と見ることはない…。

わかっているけど、哀しいんだ、酷いのだ……。
この、ももがいない現実が、酷く虚無で虚ろで脆いのだ……。
私がいるのに、ももがいない…。
骨になったももしかいない……。

もう、ものいわぬ真白なももだ……。

「では、足の骨を順番に壺に入れてください」
動物葬儀の係の人が骨拾いの時を告げる。

(もう、お別れなんだな…)

私は、そっと金属製の箸でももの足の骨を掴むと、そっと入れた。
(母は確か私の前にももの足の骨を壺に入れたと思うが、記憶がここは曖昧である。が、それはまあ、仕方ない)

えらく軽くて、えらく儚い感触だった…。

ももだった物体であるももの足の骨は、割と逞しく太くしっかりした骨だが、こう持ってみると、恐ろしく軽くて、酷かった。
こんな、ももの姿見たくはなかった…。

ももの姿は、私にとっては、非常に美猫な素敵な姿なのだ…。
長くて綺麗な尻尾を持つ、フンワリさらさらなやわらかい毛な猫なのだ…。
愛しきサバトラ白の、可愛くて仕方のない猫なのだ…。

こんな真白な儚い物体ではないのだ……。

けれども、これはももなのだ。御骨になってしまったももなのだ…。

酷く哀しい、酷く儚い…。残酷な姿…。

恐ろしく脆い…。力を入れたら砕けそうなほど、儚い…
ももの骨はそんな感じだった。最期に触れたももは、えらく儚いものだった…。

私がももの骨を入れた次は、父の番だった。
が、恐らく父は、ともかくショックだったのだろう。静かな顔でもショックだったのはわかるようなことをした…。

「おいおい、お父さんっ!」
父は金属の箸で、ももの頭蓋骨を掴もうとした……。

(おいーーーっ!!?)

もっとも、まるで、父親につかまれるのが嫌であるといわんげに、ももの頭蓋骨は、父親の使う箸からするすると逃げているようだった。
まるで、なにすんのよ、いやだよ~んといわんげに…。

「なんだ?」
父は何処か呆然としている。何をお前はしたいんだ?といわんげな顔をしたのだった。
が、それは間違いなく私の思いである。

「壺に入れるのは、ももの足の骨だよっ」
「え、そうだっけ???」
父は非常に不満そうに、ももの足の骨を金属の箸でつかむとそっと壺に入れた。
「なにやっているんだよ……足の骨を入れてくださいって聞いてただろうが…」
ムカムカしながら(不覚にもちょっと笑ってしまった)私はいうしかなかった。
まったく人の話を聞かない、うちの両親であるから、まあ、父親がこんなことをするのは、本来なら想定内なのかもしれない。けれども私にはそんな余裕はかませなかった。
「そうだっけ???」
父はきょとんとしている。でも、すらとぼけているのが、どこか哀しそうだった。
父も悲しいのだ。悲しくて仕方ないのだ…。母はわからないけど。
ちなみに母は笑っていた。なんか、そんな風に記憶している。

(もも、ごめんね…)

と心の中で謝るが、骨になったももにはどうでもいいことなんだろうか…。
まあ、ももはこの人間どもの流れなど、もうどうでもいいことなのかもしれない…。

そして、ももの骨の残りも壺に入れられ、最後にその父親が掴もうとしていた頭蓋骨もそっといれられた。

(またね)
骨になったももが、そういった気がした。

(また会おうね…)
私はなんか自然に心の中でいっていた。思い込みだといわれれば、それまでなのかもしれないと
そんなことも思った…。でも、いいや…。

壺にふたをして、ここの寺の慰霊堂にやって来た。

ここにはずらっと亡くなった動物達の位牌が並んでいる。これがまあ、お墓である。そして、その近くには納骨堂がある。
ここの慰霊堂は中央に何やら見守るように仏像が置いてあり、まわりは由々しきお供え物やお花がが供えられている。そして、仏像の周りには亡くなった動物たちの位牌が、壇上になってずらっと並んでいる。
そして、仏像の前には、壺に入った骨になった動物達が祀られている。
この御寺ではここの慰霊堂に1週間ほど祀られてから、納骨堂に収められるという。

ももも、その骨壺が祀られているところに置かれた。壺のふたに書かれた、”平成29年11月28日 愛称もも” の文字が悲しかった。
そして、ももの位牌を並べると、ふたたび、私達は御線香をあげて手を合わせた。


こうして、もものささやかなお葬式は終わった…。


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ももとの最後の思い出ー回想記13 に続きます。

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ももとの最後の思い出ー回想記11

続きます。

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11月30日 猫は訴える…?

ももが御骨として、姿を現すのは、あとほんの少しの時間になっていた。

そこで、よくよく考えると不思議な現象にであった。

火葬場の外に出ていても、できることなんて、黄昏ることぐらいである。
椅子代わりにおいてある、大きな石に座って、空を見上げてもあいにくの曇り空だ。
もっとも、どんな天気だろうとなんだろうと悲しいものは悲しいのだ…。

そんな私を見ているものがいた。それは恰幅のいい三毛猫であった。

その猫は、どうしたんだい?といわんげに、私の傍に寄り添うように来てくれた。
そのしぐさが、ほんの少しだけ、ももに似ていて、なんだかまた泣けた。
よしよしと、いわんげにその猫は、頭を擦りつけてくれている。

猫は優しい…。愛猫をなくして泣く人間によりそってくれもする。顔を合わせたのは初めての猫だが、優しく、そっとすりすりしてくれた。

(猫はやさしいよ…。ももだって優しいのだ。そりゃ当たり前なのかもしれないけれど…)

「ありがとうねえ…」
私はその三毛猫をなでた。生きた猫の毛がなんだか愛しく哀しかった。
ちょっと前まで、ももをなでなでしていたのに、もう私は、ももを撫でることもできやしない…。もう二度とできやしないのだ…。
三毛猫は私を見ながら、撫でられて目を細める。まるで、よしよしといっているかのように。

「うちにはね、サバトラの可愛くて賢いももっていう猫がいたんだよ…。でもね、死んじゃったんだ…。あっというまに天国へ行っちゃったんだよ…」

撫でながらいう言葉は悲しい言葉でしかない。なんで、初対面の猫に私は悲しい話をしているのだ。この場所が寺だからか?
一体、私は何回泣いたら気が済むのだろう? また涙はあふれてきそうになる。
三毛猫はそっと私の手に頭をこすりつけた。
「わからないか…、そりゃそうだよな…」
そういいつつ、どこか、この猫が私のいっていることを理解しているように見えた。
三毛猫は私をそっと見ると、おもむろに鳴いた。

「げこっ」
一瞬、涙がぶっ飛んだ。思わず三毛猫を見る。
(えっ!?)
三毛猫はどうした?といわんばかりに、私を堂々と見ている。そして、
「げこげこっ」
と鳴いた…。

………。 ええっと、あなた、猫ですよねえ???

「猫がカエルの鳴き声をしている~っ!??」
母親が素っ頓狂な声をして、こちらにどすどすとやって来た。
「ええっ!?今、由羅、お前が鳴いたんだよな???」
父親はちんぷんかんぷんなことをいう。
「誰が、寺で猫を撫でながら、カエルの鳴きまねする奴がいるんだよっ!??」
我ながら、妙な事を言っているとは思うが、猫がカエルの鳴き声をしたのは事実なのだ。
三毛猫は我ら3人を見て、また鳴いた。
「げこっ」
なんでもないように、当たり前に三毛猫は鳴いた…。

「えええええっ!???」
バカでかい声をあげて母は吃驚して、父は呆然としている。
「猫がカエルの鳴きまねしているなんて…」
腑に落ちないような、なんともいえない顔を父はしていた。無論、私も吃驚していた。
確かに、吃驚していた。
だが、どこか妙に納得もしていた。容赦なく自然に納得していた。
三毛猫は私を見た。
と一瞬、くらっとふわっとなったみたいだった。ちなみに、ここからちょっとの間、どうにも不可思議な現象が私の中で起こる。

「カエルの鳴き声を猫がするのはあたりまえなんだよ」
ちなみに、このセリフの声を出したのは私である。
が、変であった。私は声を出すつもりなんてなかったのだ。出しているつもりもないのだ。
が、勝手に唇といい口といい、動いていたのだった。
(あれっ!!???)
なんていうか、自分が動かしているつもりは無いのに、勝手に動くのだ。
(私じゃないぞっ!?)
私は、違和感を感じるがどうにもできない。

(ももっ!!?)
瞬間的にそう思った。
この時の感覚は未だにどうにも形容し難い…。どう表現していいのかわからないし、今まで経験もないし、何とも不思議な感じだった。
どうにも、信じられない現象だが、確かに私の身に起きたことだ。
私の意志とは関係なく、口は言葉を紡いでいくのだ。まるで、私のように…。

「よみがえるだから、カエルの鳴き声なんだよ」
「はあっ!?」
「へえっ!?」
私の言葉(!??)に二人は私を見る。恐らく、この二人からしたら、私がしゃべっているようにしか思わないのだろう。だが、違うのだ。私は声を出している感覚がまったくないのだ…。
けれども、私の声は勝手に紡がれていく。私の思いも何も関係なく。

「だから、生き返るから、蘇るんだ。戻ってくるのだから」
私の口が勝手に動く。

「ももが戻ってくるのか?」
父親がいう。

「それ以外、誰だというの?」
(ももがしゃべっているのか!??)
私にはそうにしか思えなかった。

「でなきゃ、カエルの声ださなきゃ、わからないでしょ?」
(…???)

つまり、もも…、君が蘇るから、カエルの声をこの三毛猫に出させたのか???

そう考えるしかない。こうかくと、どうにも、胡散臭く見えてしまうし、信憑性もイマイチに見えるし、むしろ、ブログにこんなこと書いて大丈夫かといわれそうだが、本当に不思議だった。

私ではないもの(ももにしか思えない)が、私の口を使って、私の言葉として言葉を発しているのだ。これは、なんともいえない。経験だった。私はちょっとの間憑依されていたのか???
不快ではなかった。ただただ奇妙ではあったけど…。

「だから、蘇るから、まってて… そういいたいんだよ」

そういうと私の口を動かしていたものは、消えていった。もう、私の口は自由になったけど、
どうにも、なんか喋る気にはなれなかった。

「げこげこっ」
と、傍らに来ていた三毛猫が鳴いた。その目は何かを訴えているように…。
この猫には見えているのか???

(ももなのか、いや、この場合、どう考えてもももだけど…)

私はそう思うしかできないし、そう思いたかったわけである。
ももは、このままでいるつもりないから、予告してくれたんじゃないだろうか…。
私を元気出させてやろうとも思ったんじゃないかな…。

だから、こんなことをしたんじゃないだろうか…。

だから、寺にいた猫に、協力を頼んで、こんなことをしたんじゃなかろうか……。

だとしたら、ももはものすごく頑張ってメッセージを残してくれたんだなと思う。
何せ、猫が嫌いな猫のももである。それでも、そのももは、私達にメッセージを伝えるために、この三毛猫に、カエルの鳴きまねをさせるように頼んだんじゃなかろうか…。
で、うちらが、イマイチわかってないみたいだから、今度は私の口に憑依して、メッセージを伝えたんではないか…。

そんな気がする。そう信じている…。

ももは、愛情深い可愛い猫なのだ。そのくらいはしてしまう。そんな気がする…。

三毛猫はなんだか、すべての真相を知っているかのように、私を見て目を細めると、またげこげこっと鳴いた。

(うん、わかったよ… もも…)
「お前はももちゃんの思いを伝えるためにきてくれたのか…???」
三毛猫は目を細めて、ごろごろと喉を鳴らした。そして、三毛猫をなでていた手にぐりぐりと頭をすり寄せた。
「げこげこっ」
猫がカエルの声を出す。そんな現象さえないのなら、ただの猫が戯れている姿なのだろう。
考えてみると、最近猫に触ってないことにかが付いた。
ももは、私が他の猫を触ってくるのを嫌うのだ。そのためもあり、私はもも以外の猫をさわることは、あんまりないのである。
「そんな匂いつけてくるんじゃありませんっ!!!」
そういいたげに、ももは焼きもちを焼いて、他の猫の匂いを消すためにぐりぐりとすり寄るのだ。怒りのスリスリである。
それを思いだして、また泣きそうになる。

(ヤキモチ焼いて、怒りのスリスリしてよお…)
ももの焼きもちが酷く切なくて、酷く愛しくて、とてつもなく哀しい…。

(もどってこいよ、もも…)
そんなことを祈るぐらいしかできやしない……。
泣きそうになりながら、三毛猫をなでなでする。 ももとは全然違う感触、それでも猫の感触…。三毛猫はどこまでも優しくすりすりをしてくれた。

そして、最期のももを見る時間がやってくる。

こんな時間、来てほしくなかった……。
こないでほしかった時間だ。まだ、こないはずの時間だったのに、今、私はその時間のなかにいるのだ…。

ももの生きていた時間、それが愛しく哀しい、哀しい、哀しい…。

求めてなんかない、望んでなんかいない時が来た…。


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ももとの最後の思い出ー回想記12 に続きます。

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