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        ここは“にゃんこのしっぽっぽ-猫的徒然話”です。 ここでは猫好きな管理人の趣味大爆走で御送りする、 ねこねこしたブログになっていくでしょう。 ちなみに、やはり愛猫ももちゃんが出現する率は高いです。
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ささら 由羅
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女性
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創作とか♪多趣味。
自己紹介:
どうも、ささら由羅と申します。COOLな猫好きな人間です。(まわりの人間いわく猫狂い、猫キチガイ)。
愛猫は、ももと申します。可愛らしく、そしてナカナカ気のつよ~い女の子でございます。どうぞ、よろしくお願いします。
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猫の日ですね…。

2月22日、猫の日ですね。

猫の日よ、おめでとうございます♪


私の家では、毎年、猫の日は、愛猫もものお食事を、ゴージャスにして、彼女の大好きな濃い目の牛乳、カニカマ、チーズ、甘酒、生クリーム、果物とか…、そういうのを出してささやかに、
お祝いをしていました。

が、ももは昨年の11月28日に天国へいってしまい、今年は何もしません。

猫の日の記念にというご連絡を仏前にしたぐらいです。
あとは、少々お供え物のお食事を増やしました。
それから、梅の花を数日前からいけてあります。

この梅は、我が家の庭に咲いていたものです。
けれども、誰一人その梅を植えたものはいないのです…。
しかし、梅は今年突然、我が家の庭に現れたのです……。




去年までは、まったく姿も何も見せなかったのに、今年になって、あまりにも突然に、梅の木が現われたのです。
この梅の木が生えている場所は、生前、ももがよく眺めていたり、そばにいたり、結構気に入っているような場所でもありました。
そんなこともあり、ももが、実はあの世から梅を咲かせに来たんじゃないかという、そんな気持ちが、我が家ではしたのです。



まあ、どうも、この梅は十数年前、母親が寄せ植えのために買った小さな梅の木をを枯らしてしまい、それを庭に投げ捨てたらしい…。
それが原因で、梅は必死に生き延びようと頑張って来たらしいようでした。

ですが、我が家の庭は、生存競争も激しい様なワイルドな状態です。
どうも花を咲かせるには厳しかったのか、ずっと花のない状態で成長し続けたようなのです。
家族の誰も、梅の木が復活して育っているなんて気づきもしませんでした。

 

が、昨年、ももが亡くなって、新しく迎えた2018年の2月半ばに、突然に梅の花は咲き始めたのです。可憐に、品のある香りをほのかに放ちながら…。
家族には、ももが咲かしてくれたように思えたのです。

 

ももは、花の好きな風流な猫でした。

だから、自分の死で悲しんでいる家族に、元気を届けたくて、梅を咲かせてくれたんじゃないかな…。ふっと自然にそう思えたのです。

そんなわけで、この梅は、うちの家族の間では「ももの梅」となって馴染んでいます。

そのせいか、この梅は、もものように愛らしく、可愛らしい、そして、頑丈な梅なのです。
妙にどこか、ももに似ているのです。



そんなこともあり、この梅の花をももの仏壇に飾った今日この頃です…。

単なる偶然で、たまたまタイミングが合っただけなのかもしれません。
けれども、どうにもどこか信じているのです。
この世に残してきた家族のために、家族が元気になってほしくて、梅の花を咲かせた。
ももなら、やりそうな気がするのです。
かなり気が強くて、ももは優しいかわいい猫ですから、そんなことを思うのです。


 

ももちゃん。ありがとうございます。
だから、私はそう思うのです。
近いうちに、お墓参りにもいくね。この梅の花を持っていくよ。君の好物ももっていくよ。

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ももとの最後の思い出ー回想記4

続きます。

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11月29日,30日早朝  足音が聞こえる…

父親が自分の部屋に
去り、私はまた、ももに手紙を書き始めた…。
ほんの便箋3枚ぐらい書くつもりが、すでに5枚ほどになっていた。ももに書く手紙だからという事で、薄い桃色の便箋と封筒を選んで書いたのだ。
儚くなったももに使うものとしてはいいかなと思ったのだ。

そういえば、この夜は少々奇妙なことが起きていたなと思う。ほんのささいなことだ。
別になにがあったというほどののものではないのかもしれない…。
けれども少々奇妙だった…。
それは思うのだ…。

しばらくたってから、それはまず起きた。

ひたひたひた…。ひたひたひた…。

2階から音が聞こえていた。弟は1階で寝ているし、母親は2階に物凄く豪快に寝ている。
おそらく父親が歩き回っているのだろう…。にしても、随分忙しいしいなと思った。
足音はちょっと早歩きぐらいのペースで聞こえてきたのだ。

ひたひたひたひた……。

やはり落ち着かないのだろうか…。眠れないのだろうか…。
そんなことを考える。父親の部屋の方から、しばらくの間その足音は聞こえてきた。
途中から、父親のイビキの音も聞こえてきた。まあ、寝ているのだろう…。

ひたひたひたひた……。
ぐぉ~…ぐおぉ~…ぐぉ~…。

……。ちょっとまて…。
なんで、イビキの音が聞こえるのに、足音が2階から聞こえてくるのだ???

イビキをかいたまま父親は、自分の部屋を歩き回っているのか???
いや、流石にそんなことはない。そんな器用なことをいくらなんでもしやしない。でも、父親しかいないはずの部屋のほうから足音は聞こえてきて、イビキも聞こえるのだ。

おいおいおい…。


泥棒か…?いや、それはない。いくら何でもそれはない。

もし、入ったとしたら、こんな静かになっているわけはない。何せうちの父親の部屋から聞こえてくるのだから、こんな静かなことはない。
鍵もかってあるし、そもそも家の構造上、私に気付かれることなく泥棒に入るなんて無理だと思う。

ひたひたひた……。

足音は軽快でである。そんな感じだ。うちの父親は大きいほうではない。かといって小柄でもないが、それを考えても、父親の足音とするには、軽すぎるような気がした。

ひょっとして、どこかの猫がまた、今度は父親の部屋に忍び込んだのか???

そんなことを考える。以前、うちはとあるお隣さん(現空き家)の黒猫のジジちゃんが、うちの母親の部屋に忍び込んで、大騒ぎな事になったことがあるのだ。
が、そんなことだったら、尚の事ありえない。何せうちの父親は猫好きなのだ。
何処かの猫が忍び込んだのがわかったのなら、喜んで大騒ぎしそうである。
が、父親はイビキはかいているが、大騒ぎはしていない…。

ひたひたひたひたひた……。

また、足音はする…。
が、私は疑問に思うものの、窓際にいるももの近くのテーブルで、ももへの手紙を書いていた。
とにかく私はそれを無視して手紙を書いた。
そんなことよりも、ももへの手紙の方が大事である。

ひたひたひたひた……。

やがて、足音は聞こえなくなり、イビキの音もだんだん消えていった…。


すとん、すとん、すとん…。

しばらくすると、足音がまた2階から聞こえてきた。
いや、足音というのには今回は違和感があった。
それは少々父親の部屋から離れたところで聞こえる。
もっとも姿を見ていないので、正確な位置は不明であるが。
軽いものを絨毯の上に落としたような響きが、私のいる部屋まで聞こえてきた。
もっとその音も繰り返し響くものの、別に1階に降りてくる気配もない。

「何もない…」
気になったので、私は2階まであがって、音がしたあたりを確認しに行った。
が、まるで私の動きを察知したかのように音は消えた。
まあ、しょうがないので、ついでにWCにいき、1階に戻って手紙を書き始める。
と、すこし経つと、

すとん、すとん、すとん…。

音は再び、2階から聞こえてきた。

「どうにもできないな…、ねえ、もも?」
いつものような感じでももに話してしまうが、こちらが動くと音が消えてしまう以上、どうにもできやしない…。できることは、この時点で、ももに手紙を書くだけである。
ももは、何も答えないのはわかっているが、やはり話しかけてしまう。
こんな少々奇妙なことが起きているのだから、ももが生き返るのではないかと思ってしまった。
が、ももは相変わらず生き返ることなく、静かに眠り続けた…。
いや、わかっているのだ。けれども、もう最後の夜とあって、私の頭も少々いかれている気がした。現実のすべてを受け止められない私は、少々狂うことで理性を維持していたのだ。

すとん、すとん、すとん…。

と段々音が大きくなってきた。こちらに近づいてきているようではある。
だが、階段を下りているわけだから、何かしら音はするはずなのにそんな音はしない。いやしたのか?どちらにしろ、それはわからなかった。
ただ、音だけが近寄ってくる…。
が、私の部屋の外、階段へ繋がる場所についたときにはピタッと音は消えました。
ドアが閉まっているので、そこに何がいるのかはわかりそうはなかった。

ひょっとして、ももの魂がうろついているのだろうか?
一番初めの足音は猫の足音にちかかったかもしれない…。
だが、今回のものも猫には近いかもしれないが、そのわりには重い感じの音にも聞こえた。
こちらの部屋に来たいけれど、ドアが閉まっているから、来れないのだろうか?
それとも私がいるから、来れないのか?
私が見たら大騒ぎのもととなるような、この世ならざるものがそこにいて、私を驚かしたくないから、ここに入ってこないのか?
ももの魂をかっさらいに来た、得体のしれない何かが私を恐れて、入ってこないのか?

どんどん思想はおかしくなる。でも、もしここに私がいることで、ももの守りになるのなら、ここにずっといたい気がした。まあ、少々怖いのは否めないのだが。

すとん、すとん、すとん…。

足音は家の外から聞こえてきた。どうやら、ドアが閉まっているから、こちらに来れなかったわけではないらしい。
階段を下りたすぐそばが玄関なのである。その玄関は夜中ということもあり鍵がかかってしまってある。それなのに、外に出ることはできたようなのだ。
一応鍵も確認したが、とりあえず閉まっている。
近くに弟の部屋もあるが、そこから出るのは不可能だろう。それこそまったく音をださずに、そこから外に出るのは、不可能である。
なんとなく足音の主は、人間じゃないように思えてきた。この世ならざるものなのかもしれない。そんあことを考えるが、だからといって、何ができるか?
何もできはしないのである。
別に害もあたえないなら、ほっとくしかない…。

「…。やばいな。思想が少々あぶなっかしい…」
独り言をいい、なんかお茶を飲む。少々冷えてきたし、一休みしようと思った。
足音が時々聞こえる以外は、部屋の中は静だった…。

すとん、すとん、すとん…。

とさっきの足音が、より大きくなって聞こえてきた。
どうも家の周りをまわっているようである。何ゆえに…??? 南洲まわっているのかわからないが、どうもまわっているらしい…。
で、ペースもだんだんじわじわとはやくなっていった…。

「この世ならざるものか?」
ひとりつぶやくものの、どうこうできるものではない。というか、発想がなんだかやっぱり危ないきがしてくる…。まあ、そう思いつつ、ももへの手紙を書くだけである。
手紙は、少し書くだけのつもりだったのだが、いつのまにか5枚になっていた。
書きたいことがいくらでも、出てくるのだ…。悲しいほど出てくる…。

どすんっ!
別に揺れはしなかったものの、おおきな音がした。足音にしては随分大きいが、すとん、すとん、すとんという足音にあわせるように音は出る。

どすん、どすん、どすん…。

少し、音のボリュームが減り、足音?は動いているようだ。何かいるような気がした。
一体家の外では何が起きているのだろうか?
微かに、笑い声がしている…???

ひたひたひたひた……。

最初に聞こえてきた足音も聞こえた気がする。

見えないだけに、何が何だかわからない。怖い様な気もするが、そのくせ、どうでもいいという気もしてくる。こういう場合は坊主や尼さんなら、もっと冷静に対処できるのだろうか?
別に出家も何もしていない私である。
あまり気は進まないが、お経のCDでもかければいいんだろうか???
そんなことも考えたが、私は結局のところ、ももへの手紙を書くのに集中していた。

しばらくの間か、短い間かわからないけれど、時はとにかく過ぎていき、やがて、手紙は書き終わっていた。その時には、時刻は4:30ぐらいだったかと思う。
そして、足音もすっかり消えて、何も気配も何もなかった…。
私は眠気覚ましにお茶を飲んでいたと思う…。

「…。いよいよお別れだね、ももちゃん。寂しいし、悲しいよ…」

何かの奇跡が起きて、ももちゃんが動き出すんではないかと期待したがそんなことは起きることなく、時は流れる。
ももは28日の日に眠って以来、一度も目を覚ますことなく、今日になった。
何度見ても、死んでいるようには見えないのだ。ただただ寝ているようにしか見えない。
起きたら、「今日のご飯は何?」といわんげに可愛さふりまくももは、もう、そんな姿をみせることは永遠にないのだ。

わかっている…。それが死というものだ。

永久に覚めない夢の中にいき、もう、”ここ”にはもどっては来ないのだ。
生きていたものが、ただの悲しい物体になってしまうことだ。
ここには、いままでいた魂はいないのだ…。

書いた手紙をももの為に読んだ。

ももはどんな思いで聞いているのだろう?
読んでいるうちに悲しさが更にこみあげてくる。
同時になんともいえない虚無もそこにあるのだ。
私は手紙を読んでいるのだな…。そして、今は手紙を読んでいる私も、いつかあの世にいくのだろう。まだ行くつもりはないけれど、どうにもそう思うのにもやたらに気力が失われて、イマイチだった。大切な者の死は簡単に、その対象を思う人間の心をぶち壊していく…。

そんなことを考えながら、ももの亡骸の前で手紙を読んだ。
手紙は、結局のところ便箋7枚になっていた。
こんなものでは、私の思いは書き足りなかった。が、どうにももうまとまらないので、無理矢理にまとめざるを得なかった。
ももは、どんな思いで聞いていたのだろう? ももは亡骸だし、生きている時のように浮かぶ表情、仕草、鳴き声で判断することもできやしない。

それでも聞いてくれるだろうか…?ももよ…。

手紙を読み終えて、淡いピンクの封筒につめると、便箋7枚では少々きつくなっていた。

ももよ、君への思いは、こんなものじゃないんだぞ。

溢れる思いは残酷に容赦なく、哀しみ、苦しみ、虚無を連れてくる。
あとすこしで、この愛しいももの姿を見ることができなくなるのだ。

えらく残酷で、酷い現実だと思った…。
そして、私はその現実を嘆くことしかできやしない…。


外が明るくなり始めていた…。こなくていい朝は来てしまった…。
私は黄昏るしかなかった。


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ももとの最後の思い出ー回想記5 に続きます。


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ももとの最後の思い出ー回想記3

続きます。

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11月29日 夜中 ももとの最期の夜

いよいよ、ももと過ごすのは最後の夜になってしまった。そう思うとどうしても、自分の部屋に戻る気にはなれなかった…。
どう見ても、リラックスして寝ているようにしか見えないもも。
けれど、この子は死んでしまっていて、明日の朝にはもう、この家にはいないのだ…。
火葬して御骨になってしまう現実。そんなのはわかっているけれど、認めたいとは思えなかった。
そんなことが、頭の中をぐるぐるまわる…。

かつて、うちにいた猫、つまりももの先代だった猫の ちーちゃん(ちい子)も思い出す。
あの時は亡くなったのは夏だったから、死体の腐敗を防ぐためにもあっというまに火葬したんだったのと思い出す。
ちーちゃんは、ももと同じサバトラ猫で可愛らしい猫だった。もっとも、ももとは違い気の弱い大人しい猫で、10歳で亡くなってしまった。随分と昔の話だ…。

この時は10歳であの世に行くなんてと思ったが、今度は19年であの世なのだ。
約1,9倍はももは長生きしたことになるが、それでも、なんでも悲しいのだ。
長かろうが、短かろうが、大事なものが死ぬのは壮絶にもうただただ悲しく、ただただ虚無だ。
この世にいなくなる。その事実が何処までも何処までも、悲しくてたまらない…。
いや、悲しいなんてものじゃない。もう自分が大破するのだ。粉みじんにされた精神でもって、
形容するのは不可能な思い感情に、押しつぶされて、ある意味、死んでしまうわけでもある。

もう、たまったものではない…。


「いつかは逝くとは思っていたけど、こんな突然来るとは思わなかったよ、もも…」

ぐーぐーねているようにしか見えないももに語る。その顔は少し微笑んでいるようにも見えて、切なくなるほど穏やかだ。
「美貌の猫なだけあって、最期まで美猫なんだな…」
こんなセリフ何度いったのだろう…。
なにも反応しないももが、酷過ぎるぐらい悲しかった。

ほんのちょっと前まで、ももは、夜中にお腹すいたよ~♪と御夜食をばりばり食べて、いっしょにいようね、一緒にねんねしよう♪と甘えていたのに…。
「みんなの確認しなくちゃね」と家族全員の寝室に順番に巡って、寝ていたのに…。
そんな当たり前の夜は、もう二度とこないのだ。もう二度と…。

亡くなる前日も、夜中に、猫缶をねだって、ばりばりと上品に食べ、すりすりもたっぷりしていたのに…。
そして、家族のもとに、巡って寝ていたのに…。

「悲しいじゃないか…」

ここにあるのは、惨い現実だ。
ただただ永久に眠る、19歳4か月の愛しい美猫だ…。

最期の晩がひとりだけで過ごすなんて、可哀想に思えて、せめて私はそばにいてやろうと思った。そのぐらいしかできない。そんなことぐらいしかできない。

「…。これからは寂しい夜になるね……」
添い寝をしながら、そんなことをいう。
亡くなるまで、夜はこんな風にふたりで、ごろごろしていたと思い出す。

「何でもないようなことがしあわせだったと思う~」
なぜか、ちょっと歌ってしまったが、本当にその通りなのだ。
「何でもない夜の事、二度と歯戻れない夜~」
残酷までにその通りで、何処までも悲しい…。そして虚無だ。

最期の夜は無慈悲に過ぎていく……。あってはならない、まだまだ先の未来の事だと思ったのに、ももはいない。ももはいない。ももはいない…。
目の前に寝ているももは、生きた猫ではなく、死んだ猫…。
スタイルはいつもと変わらないけど、もう最後の夜…。

「眠れないよ、最期の夜なんだぞ…。明日にはももがいなくなっちゃう…」
綺麗な美猫のももは、は本当に最後まで美猫である…。

そして、私は起き上がった…。なんのことはない、ももに手紙を書くためだ。

時刻は1:00を回っていたが、眠くはない…。そして、ほんの少しだろうが。もものために何かしたいと思ったのだ…。生者が死者の為にできることなんて大したものはない。
それでも、せめて、できることはしたかった…。

一旦、自分の部屋に戻り、便箋と封筒を持ってきた。
そして、テーブルにつくとボールペンを出して書いていた。ももに手紙なんか書くのは初めてである。そもそも生前のももに手紙なんか出したことはない。
ももは文字は理解してないのだから…。いや、そうではないかもしれない。
ひょっとして文字を理解していたかもしれない。
よくよく考えたら、理解していたとおもうようなエピソードがかなりある…。少なくとも自分の興味のあるものについては確実に字はわかっていたんではないだろうか…。
買い物のメモでチーズ、牛乳とか書いておいたものをテーブルの上とかに置いておくと、それを見て、ごろごろとのどを鳴らし、うきうきした顔でこちらにやってくるのだ。
「おいしいものでしょ~?ほしいな~♪」ってな顔である。そんな顔をして、嬉しそうに催促してくるのだ。
ちなみに、ももが好きではないものを書いておいてもこんな風には反応しない。
なんだかわかるらしい…。
日ごろも何故か本の傍で佇んでいる、そんなももなのだ。そんなこともありひょっとして…とは考えてしまう。
我ながら、猫バカなのかもしれない…。

それはさておき、猫に、しかも死んだ猫に手紙なんて、はじめてかもしれないと、妙に真面目に考えながら手紙を書き始めた…。


ーーー親愛なるももちゃんへーーーーー

貴女は非常に賢く、人間のいう事など容易に理解していました。どう見ても、理解していたようにしか見えません。ひょっとして、文字も理解していたかもしれません。
貴女の事だから、私達が思っているよりもいろんなことを知っている御方だったのかもしれませんね…。だから、ということもあり、手紙を書くことにしました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんな文章で手紙を書き始めました…。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

突然、あなたは天国にいってしまいましたね。未だに信じられません。
亡くなるほんの30分前には、窓辺でのほほーんと呑気に、はっちゃんににた野良猫を見て寛いでいたのに、私は呆然とするしかなかったよ。
あなたは、苦しそうにのたうちまわりながら、私の腕の中で息を引き取りました。
私の腕の中で、私を見ながら、あなたの瞳の光がすっと消えるのを見ました。
あなたがふっと軽くなったのを感じ、信じられない気持ちであなたを抱いてた事を私は忘れることはないでしょう。
あなたが天国にいってしまった事実が未だに信じられないのです。
現実把握能力も何も壊滅しているかのような私ですが、あなたが生きているように見えてしまうのです。あなたは死んでいるといっても、ただただ呑気に眠っているだけの美猫にしか、いつものあなたにしか、見えないのです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

なんともいえない気持ちで、私は手紙を書き続けました。
書けば書くほど、書きたいことは、もういっぱいわいてくるのでした。
死ぬ前日の夜中には猫缶を思いっきり豪快に可愛く上品に食べ、そのあと、のんびり家族の見回りにいったももを思い出す…。
あんなに、元気よく食べていたのに…。まだまだ、長生きしまくって、グルメな猫ぶりも見せてくれるはずだったのに…。
ジャージー牛乳だって、いくらでも飲ませてあげれたのに…。
3回も「おかわり~」といって、ジャージー牛乳をおねだりして、おかわりしていたももを思い出す…。もう何度繰り返しただろう…。

「グルメなんだよね、もも、お前は…」

傍で眠っているようにしかみえないももをそっと見た…。
夜中に書き物とかをして、ももがすぐ近くでぐーぐー寝ていた。そんな時はよくあった。
あたりまえのように、そんなことがあったのに、もう、それは当たり前のことじゃなくなったのだ。いま、ここにいるのは永遠に眠ることになったももで、この姿をしているのも、あと僅かなものなのだ。火葬にいけば、もう問答無用で儚き骨になってしまうのだ…。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あなたは、19年と4か月、うちの猫として立派に生きました。

とんでもなく美人で、とんでもなく賢くて、とんでもなく可愛くて…。
そして、とんでもなく優しい猫でした。
ちょっと変な趣味もある、素敵な猫でした。
あまりにもいろいろ凄いので、猫又ではないかと疑われる、まれなる猫でした。
家族だけではなく、まわりの人々にも愛され、またあなたも、家族を愛し、まわりの人々も愛する素晴らしい御方でした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

そんなことを書いていると父親が来た。

「お前はまだ起きているのか…寝ないのか?」
「一応ちょっとは寝て、今、ももに手紙を書いている」
「猫が手紙を読むのか?」
父親は呆れたように言う。
「ももだったら、あの世で読むような気がする」
「おいおい」
「ももは私の膝の上で本を読んでもらったり、PCの画面を見てたりしてたしね。それに、お父さんの部屋でお父さんとクラシック音楽をきいたり、となりのENDOWさんちにお邪魔して花を観賞しているような風流な猫なんだから、文字を読めても不思議じゃないでしょう?」
「…。確かにそうなんだよな…。猫だけど人間みたいでなあ…」
父親もそんなことをいう。
「俺のピアノの素晴らしい演奏を聴く奴もいなくなっちゃったんだな…」
「…。 そういうことだ…」

頭がくらくらした…。父よ、こんなところでボケかますでない…。

唐突に説明するが、父親のピアノの演奏は演奏ではない。
いってはなんだが、騒音レベルで酷い…。人の話をまったく聞かない人で、自分の思い込みだけでやるので、凄まじいものになっているといっておこう。
が、本人は、それを素晴らしいものだと心の底から思え、人に対してはとにかく上から目線で音楽とはなんだかんだというので、家族はこれに関しては呆れてしまっているのだ。
で、父親はこの家族は「音楽のよさがわからないんだっ」というのだ。タチが悪い…。

「ももは、俺のピアノの演奏を嬉しそうに聞いていたんだよなあ…」

それはさておいて、父親は過去を懐かしんでいる。まあ、妄想は自由である…。

「ももが若いころはピアノの上で、歳をとってからは床の上か、ソファのうえにのって佇んで、俺の演奏にうっとりと聞き惚れていたんだよなあ…」

ももの生前の話は、とんでもなく美化された話となっていた…。かなり…。

実際のところ、ももは懐のおおきな温和で優しい猫なのだ。
つまり、なんていいますか、父親の騒音といわんばかりの演奏をうっとりと聞いていたのではなく、しゃーねーなーという感じで、聞き流してただけなのである。
要するに父親の酷い演奏に耐えられる精神、もしくは耐振性が強靭だったので、父親がいっくら酷い演奏をしても、やさし~く見守れるという類まれな猫だったのである。

死人に口なしといわんばかりに、父親は、かつてのももの昔話をした…。
ももの死体は、しゃーねえーなー…といわんげな顔をしているように思えた…。
できの悪いおバカな息子の面倒をみて、溜息をついている母親の図のように見えた…。

「もも~、お前なあ、もう俺の素敵なピアノの演奏聞けなくなっちゃうんだぞ…」

悲しそうな父親の声が静かに響いた。
ももは、答えない…。答えるわけがない…。いろんな意味でいえない…。

「寂しくなるじゃないか…。お前だけが俺の演奏聞いてくれたのにな…」
確かにそうである…。家族はみんな耐えられない…。
父親の事を凄まじく妄想が激しいとものすごく思うが、本当に寂しいのは真実である…。
「あの世では俺の演奏も、クラシック音楽もきけないんだぞ…」
私は戦慄していいんだか、悲しんでいいんだかわからない状態である…。

「お前だけが家族の中で、俺の芸術をわかってくれるいい奴だったのになあ…」

いろいろツッコミはいれたいが、そんな元気はない。ただ父親のいうのも理由は全く違うとは思うが、ももは確かに父親のピアノの演奏(騒音)を理解した奴?ではある。
自分の理解者を失った壮絶な痛みはよくわかる…。ものすごく複雑だけど。

「もも、お前はもう俺のピアノ聞けないんだぞ…」

悲しそうに父親はいった。が、申し訳ないが気分は複雑である…。悲しいのはわかるけど、ももは今どう思っているのだろう…。ふとそんなことを思う…。
彼女もいろいろツッコミを入れたかったと思う…。ももの顔も複雑そうに見えた…。

と父親はやさしく、ももの頭を撫でた。ふっとももは笑った気がする。
そのあとも、父親はなんだか、ももに話しかけていた…。

「死んだようには見えなくて、やっと体も死体らしく随分硬くなったけど、しなやかだな。
もう、冷たくなっちゃったけど、暖かい様な気がする…。死んだのに、すぐに体が硬くはならなかったのは、みんなに、こうやって撫でてもらいたかったからなんだな、もも…」
父親はももを撫でている。
「こんな呑気な顔していて死んでいるんだからな…。幸せだったんだろうな…」
確かにそうかもしれない。繰り返される思い…。

ももは、あんなに暴れて苦しそうだったのに、亡くなる直前、私の顔を見た時にはすーっと表情は緩んで穏やかな顔をになって、力尽きたのだった…。
瞳の中にあった光もすーっと消えていったけど、本当に穏やかに、まるで、別の生き物というか化け物のような凄まじい姿だったのに、いつもの猫の姿、ももの姿に戻っていったのだ。
苦しみから解放され死に向かう時、彼女は猫に戻ったのだろうと思う…。
そして、美猫である自分を崩すことなく、あの世にいったのだ…。

「みんなを悲しませないために、こんな顔で死んでいったのかもな…。本当は、3年前死ぬはずだったのに、頑張って、ももは長生きいたんだ…」
「そうかもしれないな。私があんまりにも情けなかったから、根性で生きたのかもしれない…」
3年前、ももは腎不全になり、心臓もよわってしまい、死にかけたのだ…。
が、薬を飲み、点滴を打ちなどし、世話をした結果、驚異の回復力で復活をし、獣医の先生たちを驚かせ、まわりの人間も大いに驚かし、復活したのだ。
回復し始めのころは、ご飯もろくに食べれなくて、体重も2、6kgしかなく、水も飲めなかったけど、あっというまに、見る見るうちに回復していったのだ。
1週間たったころには、死にかけたことが嘘のようにけろりとして、体重も3か月後には3,8kgに戻りました。本当にあの時はいろいろびっくりしたなあ…。思い出すとももはやはり凄い猫である…。

「今回も私はまだまだ相当情けないんだから、また奇跡の復活してほしかったよ…。 こんな情けない私を置いて、あの世にいっちゃうんだからなあ…」
そうぼやくしかなかった。奇跡でもなんでも起こしてほしかった…。

「もう、限界だったんだよ…。ももは精一杯生きたんだよ…」
「もっと精いっぱい生きてほしかったよ…。ももは、私が60歳になるまで生きてねっていったら、にゃ~っていってくれたし、私よりも長生きしそうな顔しているのに、これはあんまりだ…」
父親は溜息をつく。
「いくらなんでも、そりゃあ、無理だろう…」
「いや、ももなら出来たはずなんだ。不可能を可能にする猫だったんだから」
不毛なセリフだ。わかっている。それでもいわずにはいられない…。
「ももは、猫としては長生きだぞ…。ちーちゃんは10歳だったんだしな、随分長く生きたよ、19年だぞ? かなり長生きだぞ?」
「何年生きようが死んじゃえば、みんな早死ににしか思えないよ…。死んでしまえば永遠のサヨナラってことは、何年生きてもそれは同じだし…。いや、わかっているんだ、でも納得いかないよ、多分納得はできないよ…」
父親とぐたぐた話しながら時は過ぎた。

ももはどんな気持ちで見ていたんだろう…?
わかるはずはない。生きているならともかく死んでいるのでは、どうにもできない。
それでも、「しゃ~ね~な~、この人達は…。」と思いながら見ていてくれたような気もした。
ももは、家族思いの優しい猫だ。だから、死んでもそのまなざしは優しく、私達一家をみていたんではないかと思う。

こうして、時は流れていく…。物凄く、早く時は流れた気がした…。



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ももとの最後の思い出ー回想記4 に続きます。

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ももとの最後の思い出ー回想記2

続きです。

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11月29日 夜 

夜になり、弟にスマホをかけることにしました。昨日の時点で、スマホなメールで連絡は入れておいたのですが、なにも反応がなかったのです。
私はとてもしゃべることなど、できなかったので、メールで連絡をしたのです。

が、仕事が急遽夜勤になってしまったのか、弟は昨日帰ってこなかったのでした。
にしても、まったく連絡がないのもおかしいと思い、スマホをかけました。
翌日が火葬をする日だったので、万が一あえなかったなんていうオチになってしまったらシャレになりません。念のために連絡をすることは問題はない。そんなことを考えてたかと思います。

「もしもし…?」
繋がったところを推察するに、どうやら小田急線形のわりと賑やかな駅でした。
「ん~? どうしたの?」
弟はのんびりとスマホに出ました。
「今日帰ってこれるよね?」
自分の声が、なんかものすごく硬質にカラカラ乾いているように聞こえました。
「そりゃあ、帰る予定だけど…??? どうしたの??? なんか、ね~ちゃんおかしいぞ」
私の様子が変だというのは、なんだか弟も気づいたようでした。
怪訝そうに彼は聞きました。
「おかしくもなるよ。ええっと…、昨日メール、スマホに出したんだけど、見てないか?」
「え、来てたの??? 気づかなかった…」
弟の声が頭にごおおおおおんと響きました。

なんということだ、弟は知らなかったのか…? だから、だから、こんなこんな…。

私の思考はすでになんか壊れていた気がします。

「いったい、どうしたんだ???」
弟は怪訝そうに私に聞きます。
「そうか、知りようがないから、そりゃあそうだね冷静でいられるんだ。私の失策だ。ええとね。私もどうかしていると思うんだがね、それはいいや…。あのね、ももが死んだの…」

「え…???」
「だからね、ももが死んだの…。昨日突然死んだんだ。あっというまにね…」
「えええ??? ももが??? ももがどうして死ぬんだよ???」
弟の声が一瞬止まって、愕然とした声になっていた。
「わ、わたしが、そんなの聞きたいよ…」
私から、ボロボロ涙がこぼれた…。
「あっというまに、凄い勢いであの世にいっちゃったんだ…。ほんの30分前には、窓辺で、窓辺で…、優雅にのんびりと、はっちゃんそっくりな野良猫みてたんだよおおお… うぎゅっ…」
こらえきれなくて、言葉はぐしゅぐしゅになってきた…。
「ええ、どうして、ももがっ???」
「もう、どうしたらわからなくて、お前に電話もかけれないから、メールをなんとか飛ばしたんんだ。でも、とどいてなかったんだね。ごめんね、ごめんね…」
「いや、俺も気づかなかったから…」
弟も、茫然として、もう途方にも暮れているようだった。

「今日は意地でも帰ってきて…。頼むから帰ってきて…。帰ってきてから、説明するから…。もう、今説明しても、説明にならないよ。ごめん…」
「帰るから、待っててくれ…」
「はやく、帰ってきて…」
そういって、私は電話を切った…。本当に心底、弟に早く帰ってきてほしかった。
このままでは、自分がぶっ壊れて、狂って、おかしくなって、消滅するような気がした。

電話を切ったあと、父親と母親がなんか言ってきたが、もう何がなんだかわからなかった。
ただ、母親の
「メール出したのに、とどいてなかったのお~???」
という声や、
「直接、電話すればよかったのに、あっ、でも仕事の邪魔になっちゃっていたかあ~?」
とかいいっていた声を聴いたと思う。


1時間後、弟が帰ってきた…。

「ももが、死んだって、本当なの???」
玄関に入ってくるなり弟はそう言った。顔は信じられないとといった顔である。
そりゃあ、信じられないだろう。
「私も嘘だと思いたいんだ…。どう見ても死んでいるように見え…見えないんだよ…???」
私は、また涙がこぼれそうになる。

「ももは何処…??? いるんでしょ???」
「うん、整えておいてあるよ」
努めて、弟は冷静にいった。
「見ていいの?」
「見ないでどうするんだよ、頼むから見てくれ…」
私は、弟をももの眠る窓辺に案内した。

「もも…??? もも…???」

乾いた弟の声が響いた。
「おいおい…。どう見ても、いつもみたいに寝ているようにしか見えないんだけど…」
「私もそう思う…」
何度見ても、ももは優雅にぐっすり呑気に眠っているような姿にしか見えないのだ…。
「でもね、でもね、全然起きないの…。なあんにも起きてくれないの。動きそうなのに動かなくて…。でも死んだはずなのに、確かに、ほんのちょっとあったかくて、ちょっとほんのちょっと硬くなんたけどやわらかくて、生きているみたいで…、詐欺だよ、これはああっ!」
もう思いの持っていきようがない。

「俺ができることってなんだ…?」
「せっかくだから、御線香はあげてあげて…。なんか、ももにいってあげて、ももをなでなでしてやって…」
なんだか、ちんぷんかんぷんな状態である。

御線香をあげると、弟は、
「なんか、生きているみたいだけど、生きてないんだね…」
ももがかぶっていた布団代わりのピンク色のタオルをはずし、ももをなでなでした…。
本当にいつものように……。

ももは、いつもの撫でられて、気持ちよさそうな顔をしているようにしか見えなかった…。
「なんだよお、気が抜けた眠り顔にしかみえないぞ…」
弟は茫然としながら、ももを撫でる。
「うん…」
「お前、寝ているようにしか見えないけど、死んでいるんだな… 綺麗なまんま、あの世いっちゃったったんだね」
「本当に綺麗なまんまだね…。もうね、死ぬときすんごい苦しんで暴れていたんだ…。シャレにならないぐらい暴れてさ…。私はもうしょうがないから、獣医さんに連れていく準備して、いくしかなかったんだ……。まさか死ぬとは思ってないしね…」
「そりゃあなあ…」
「でも、床におかないでずっと抱いてればよかったのかもしれない… 慌てて、かご持って来ようとして動いたけど、ももが急に動かなくなって…」
いいながら、ももの最期が思い浮ぶ。忘れることのできない思い出として、それは甦る。

「慌てて、抱き上げて、ももを見たんだけどね…」
「うん…」
「私を見ていた…ももの目から、すーって光が消えていったんだ。ももが最後に見たのは、慌て狂った私の姿だったのかもしれない…」
弟は泣いていた。
「同時にすーっと、ももが軽くなって…、もう猫じゃない悪魔かなんかのようだった顔はいつの間にか穏やかなそれになっていてね…。もう惨いぐらい…」
私もまた何度目かわからない涙がこぼれていた。もう自動的にどぼどぼ出るのだ…。
「私は、ももの目を閉じさせて、出てきちゃった舌を中に入れるしかできなかった…」
「うん…」
「なんにも、ももを助けられなかったんだ…。なんにも…」
「うん…」
「あんなに苦しんでいたももを何も助けてやることなく、ももはあの世にとんでもない勢いでいっちゃったんだ…」
ぼろぼろと兄弟でしばらく泣いた…。

「死ぬなんて、想像できなかったよ…。30分前には、はっちゃんに似た野良猫を見て、優雅にのほほんとしていたんだよ??? それが30分後には、あの世にいっちゃうなんて誰が想像できるんだよ???」

ももは、悠然と眠っている。もう二度と冷めない夢を見ながら、死んだとは思えない、美しい姿でそこにいる。気の抜けたような、生きているような気持ちよさそうな寝顔でそこにただただ永遠に眠り続けるのだ…。

「19歳と4か月…。猫としては長寿だと思うけど、もっと長生きしてほしかった。こんあの早死にだよ。私がが60歳になるぐらいまでは生きててくれる、そんな気がして、そんなこと簡単にできそうな顔をしてたくせに、こう、あっというまにあの世に行っちゃったんだ…」

「本当に死んじゃったんだな…」

「こんなことだったら、ジャージー牛乳の増してあげればよかった…。もも、「おかわり~」ってちゃんと発音して、催促して3杯も飲んだけど…。こんなことなら、もっといっぱいのましてあげたかったなあ…。後日、濃い目の牛乳はあげたけどさあ…」
もう、後悔ばっかりが止まらない…。

「モンプチも、ちゃおちゅーるも、イナバも、シーバも、カニカマも…、他にも、もっといっぱいあげたかったなあ…。ごめんね、ももちゃん…」
もう、ただただ泣くしかない…。

「せめて、お供えに、ジャージー牛乳とか、キャットフードとか、甘酒とか、そなえたけどさ…。なにも用意しないなんてできないでしょう…」
「そりゃあなあ…」
「お供えとかを買い物している時に、本来なら、生きているももちゃんの為に私は買い物していたはずなのにって思ったら、お店で泣き叫びそうになったよ…」
「だろうなあ…」
「とまかく、ももにしてあげれることはしたよ。セミントラ(腎不全の薬)もあげたし、ジャージー牛乳もあげた…。最期のお薬に、最期のジャージー牛乳だ… 死体だから、口濡らしただけだったけど、それがえらく惨く悲しかったんだ…」
「うんうん…」

ただただ、ももの話をして、ももを撫でていた。
そんなことぐらいしか、私ら兄弟にはできなかった…。
気が付いたら、もう夜中の11:30にはなっていた……。

「じゃあ、俺、そろそろ行くわ…。もも見るのは、もうつらいよ…」
「うん…。もも、喜んでいるよ。ちゃんとお別れできたのだから…」
弟は涙を拭いていう。
「明日には火葬につれていくから…お前も来れるか…?」
「悪い…。行くことは不可能だ…もうしわけない…」
たしか、そんな話をした…。仕事の関係で来れないという事だった。

「私は、最期だからいってくる…。きっついけどね。こんなに可愛いももが骨になるなんて信じられないし惨いけど…」
「最後に付き合えなくて、すまない」
「おまえの分も、ちゃんと祈ってくる…」
「ありがとう…」

夜は悲しく過ぎていった……。
火葬の日は、刻々と近づいてきた…。物凄く惨いのだな…。

そう思った。残酷なほど当たり前なのかもしれないけれど……。



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ももとの最後の思い出ー回想記3 に続きます。

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ももとの最後の思い出ー回想記1

愛猫ももは、突然11月28日の12:30にあの世に行ってしまいました。
未だに呆然としているものの、徐々に現実を受け入れて、苦い思いをかみしめている…。
そういう現実です。

あまりにも突然の死でショックではありますが、このまま記憶をただただ消してしまうことになってしまうかもしれないのはいただけません。
そんなことを思います。

悲しくても、惨くても、これはももとの最後の思い出ということにもなるのです。
ですから、私は書くのです。

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物凄い速さで、日は流れていった気がします。

11月28日 夜

ももの死体は、死んでいるのが信じられないほど、しなやかで美しく、見ている姿は、どうにも寝ているようにしか見えませんでした。
これがまた、ふにゃんとしたリラックスしたような姿なのです。
死にたてほやほやだから、死が信じられないのもありますが、随分と綺麗な死体でした。
淡いピンク色タオルを布団のように被っているももは、いつものように寝ているようにしか見えなくて、どうにも緊張感がありません。でも、それでも死んでいるのです。

寝ているようにしか見えないのに、まったく動かないのが不思議でしかありません。
昼間には猫ではないような生物になり苦しんで暴れまわっていたことなど、まったく忘れたかのような、ももの姿でした。
安らかすぎるほど静かな、美猫というのにふさわしい姿でした。
それゆえ、底なしに惨く感じました。

「おーい、もも…。薬飲まなきゃダメだろう…」

いつもあげていた液体の薬であるセミントラをももの口に入れました。最後のセミントラです。
死んだ猫には必要ないものですが、してあげたくなったのです。
セミントラは毎日ももが飲んでいたお薬です。
ももは飲めませんから口を濡らしただけでした。
いつも、「もう仕方がないなあ」という顔をして、薬を飲み、飲み終わった後は「一仕事終えたぞ」というドヤ顔を見せていたのに…。
もう、そんな顔はしないのです。昨日まで普通に飲んでいたのに…。

「ちゃんと飲まないとダメだぞ…」
そんなこといっても死体が飲めるわけはありません。でもいわずにはいられませんでした。
死んだことが認められないのです。わかっているけど認めたくないのです。

どうにも信じられない私は、この夜はずっと添い寝をしているようなものでした…。


11月29日 朝~昼

「もも、起きないねえ…」

母は動くわけのないももの姿を見て呟きました。
7:30.通常なら、ももは既に起きていて、朝の散歩ついでに、休みの日には寝坊しがちな私を起こしてくれる時間でした。まあ、起こしてもらいながら一緒にねてしまうという時も結構あったのですが…。

「もう、起こしてくれないんだね…」

私は自分自身にいい聞かせる様にいいました。自分で言っておきながら、悲しいものでした。
ももの目覚ましは強力で可愛いものでした…。
はじめは、「おきなさ~い」といった感じで呼びかけるのです。
可愛い声で鳴くのです。
で、起きると普通にすりすりしてくるのですが、起きないと次のステップに行きます。

2段階目は、人の体の上に乗り(だいたい、お腹か胸の上)悠然とおすわりか、ふせをします。
で、「おきなさ~い」と再び語り掛けます。が、起きないと、だんだん声が大きくなり、
「おきろ~」と終いには鳴くのです。

で、3段階目にいくと、顔に乗るのです。どすっと容赦なく乗るのです。
顔がもふもふして、重くなります。ももの香りがふわ~んとします。
これはこれで、気持ち良かったりします。

で、4段階目になると、人間の顔をつんつんとやりはじめます。
ほっぺた、おでこ、口、鼻…まんべんなく、つんつんするのです。これがくすぐったくて、可愛くて、結局起きます。

ちなみに、最終段階は一番強烈です。なにせ、ももはそーっと、可愛いおててを、人間の開いている口に突っ込むのです。これが苦しい。嫌でも起きます。
慌てて起きると、「よ~し起きたね」といった顔をして目を細めます。

で、ももはどの段階で起きても、「おはよう」と鳴いてすりすりとすりよってくるのです。
本当に可愛らしい目覚ましでした。

でも、もうそんなことはしてくれないのです。永遠に眠りっぱなしで、起きないのです…。

「もも、私起きちゃったよ… おはようの挨拶もしてくれないのか…?」
安らかな顔をして、眠っているようにしか見えないももが悲しくてたまりませんでした。
「お腹すいたでしょ? モンプチもカルカンもシーバもあるよ。もものお気に入りの、チキンの煮た奴だってあるんだよ???」
そういっても、ももは無言です。奇跡でも起きてくれないかと待っても、無慈悲に動きません。
ただ窓辺に寝そべっている姿に見えても、ももはいないのです。
ももではなく、ももの死体があるのです…。

朝から昼は 死んだもものために、お供え等をして整えました。
本当は生きているいつものももに、する予定のお手入れは、結局、今は死んだももの為に
することになりました。

耳を綿棒で綺麗にして、濡れティッシュで顔を拭いて、ももの大好きだったピンクのブラシでブラッシングしました。最後のお手入れです。悲しいほど綺麗なももでした。
はたから見れば、いつものようにブラッシングをして気持ちよくなって、ごろ寝しているようにしかみえないのに、動かないのだ。
綺麗な毛並みで、ちょっと硬くなってしまったけど柔らかで、ごくほんの少しだけ暖かかったです。もっともこれは、いいお天気だったので、太陽がでていました。
だから、ほんの少しだけ温度があったのでしょう。

買い物に行ってきて、ももが好きなものも新たに供えました。
本当は、生きているももの為にこの品物はあげたかった…。買い物中も涙が出そうになります。

帰ってきて、甘酒や、ジャージー牛乳もももにお供えしました。
ももが好きなのです。もう食することはできないけれど、せめてものとしてお供えしました。
甘酒はなぜかももは飲むのです。ももが飲む場合は、いつも水で薄めて猫舌でも飲みやすい様にしていました。それをももはおいしそうに飲むのです。
私が甘酒を飲んでいると、「私にも頂戴」といって上目遣いのうるるんとした目で、こちらをみるのです。塩分も入っているのでたくさんはあげれません。ももは腎不全でしたから、そのへんは気を使っていました。
けれども、こんなことになってしまうのだったら、好きなだけ飲ましてあげたかった…。

ジャージー牛乳もももは好きで、猫用の飲料水用のカップに少し入れてあげていたのですが、最期にこのジャージー牛乳を飲んだ日は、とても美味しかったのか、「おかわり~」と鳴いて催促し、3杯も飲んでいました。けっこう豪快に飲んでました。
が、そんなにいっぱいは飲ますのは安全じゃありません。ついでに言うなら賞味期限がかなり近かったこともあり余計に心配でした。
「流石に3杯は飲み過ぎだよ」
といって、おねだりしそうなももにいった自分は、随分冷たい人間だったのかなと思います。
後日、ジャージー牛乳はなかったので濃い目の牛乳をあげたけど。
それはそれで、おいしそうな顔をしてたけど、やっぱりたんまりあげたかったなあ…こんなことになるのなら…

もう、何かするたび、ももにもっといろいろしてあげたかったと、後悔やら、哀しみやら、悔やみやら、ぼこぼこ湧いてきます。
そのたんびに、私はももを「ごめんなさいね、もも…」といって撫でていた気がします…。

もっと、幸せな思いいっぱいさせてあげたかったなあ…。

もっと、でろでろに甘やかしたかったなあ…。

もっと、いっしょに、いちゃいちゃしたかったなあ…。

いろんなことが、思い出されて、何度も泣きました。自分のことを血も涙もない人間だと思っていましたが、思いのほか涙はぼろぼろ気を付けないと出てきます。
この日は一日中泣いていた気がします。


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ももとの最後の思い出ー回想記2 に続きます。

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